森川英典氏(第67・68期会長,第65・66期副会長)コラム

2019年

地元散策 〜4月初旬のツツジ〜

4月初旬の花見と言えば,昔から桜が定番であり,西宮でも夙川公園が有名である.一方,西宮の古社である廣田神社の敷地にある広田山公園では,兵庫県の天然記念物に指定されているコバノミツバツツジの大群落があり,桜と同じ時期に満開を迎える.小高い丘全体がツツジで覆われ,圧巻である.近くにある新池の桜並木と併せて,一度の散歩で両方の花見を楽しめる.

2018年

地元散策 〜ダイヤモンドクロス〜

筆者が学生であった昭和50年代以前,阪急西宮北口駅には,東西方向の神戸線と南北方向の今津線が平面交差していた.路面電車以外の平面軌道交差はめずらしく,ダイヤモンドクロスと称され,名物として地元住民や鉄道ファンからも愛されていた.しかし,その後,昭和59年に惜しまれながらダイヤモンドクロスは撤去され,今津線は今津北線と南線に分断された.現在は,駅の東南にある広場の一角に,ダイヤモンドクロスの一部がひっそりと保存・展示されている.

2017年

地元散策 〜古代の西宮〜

古代においては,今の西宮市の中心部は海の中であり,直径1.5km程度の入り江になっていた.西宮の古社である廣田神社の境内にはそれを表した地図が掲示されている.今の阪神電鉄西宮駅も,JR西宮駅も元は海の中であったようだ.ところで,その入り江の中に一つ島があった.現在の西宮市役所がある場所(阪神西宮駅とJR西宮駅の中間位置)である.やはり役所は,地盤の良いところを選んでいるということかと感心させられる.

地元散策 〜野鳥の楽園(その3)〜

西宮市の古社,廣田神社の近くにある新池という池には,多種多様な野鳥が生息しており,繁殖地でもある.この池で今年の1月,鳥インフルエンザが発生し,立入禁止措置がとられた.立入禁止が解除された後,3月に久しぶりに行ってみると,何事もなかったかのように,カワウやアオサギなどの騒がしい子育て風景が蘇っていた.強い生命力に感心させられる.

2016年

地元散策 〜宮水(西宮の水)〜

筆者の地元,西宮を散策していると,国道43号線の南側に,各酒造会社の宮水井が多数見られる.灘の酒にとって欠かせないもので,江戸時代に日本酒の原料としての高い価値が認められた.硬水であるが,リンが非常に多く,鉄分が少なく,まさに日本酒にうってつけの水であるようだ.やはり灘の酒はこの地ならではの特別な酒である.

地元散策 〜高校野球の原点〜

西宮市の甲子園浜にある公園の一角に,旧鳴尾球場跡の記念碑がある.高校野球の前身である全国中等学校野球大会は大正4年に大阪の豊中球場で始まったが,第3回大会から第9回大会までは鳴尾球場で行われた.第3回大会の優勝校は愛知一中であったが,第4回大会は,何と「米騒動」で中止になったそうだ.

地元散策 〜高校野球の聖地〜

大正4年に旧豊中球場で始まり,大正6年からは旧鳴尾球場(現西宮市)で開催されていた全国中等学校野球大会は年々,観客が激増し,収容しきれなくなったことから,大正13年に甲子園球場が建造された.ところで,「甲子園」という名称は,大正13年が十干十二支の最初にあたる甲子(きのえね)であることから縁起を担いだものである.もし,建造が1年遅くなっていたら,「乙丑園」という名称になっていたかもしれない.

地元散策 〜勝運の神〜

筆者が住んでいる西宮の地名の由来は,平安時代にこの地にあった神社のことを京の都からみて西にある宮(神社)と呼ばれたことのようで,この地で最も古い神社である廣田神社(現西宮市大社町)を指していたとされる.廣田神社は、神功皇后摂政元年(201年)に同皇后が創建したとされている.「日本書紀」には廣田国にある古社として記され、神功皇后にとっての勝運の神とされている.今では阪神タイガースの勝運の神でもあり,毎年春先に,選手・球団関係者が揃って必勝祈願することでも有名だ.結果を出してほしいと願うばかりだ.

地元散策 〜野鳥の楽園〜

西宮市にある甲子園浜の東部に,何とも不思議な光景が見られる.環境省の鳥獣保護区に指定されている野鳥の楽園であるが,海の中にコンクリートの残骸が多く見られる.何とこれは,昭和4年に開園した甲子園娯楽場(浜甲子園パーク)の一部が,海に沈んでいるのだ.浜甲子園パークは戦時中,軍事用地(鳴尾飛行場)となり,その後,海に沈んで,野鳥の楽園として今でも現役なのだ.

地元散策 〜野鳥の楽園(その2)

西宮市の甲子園浜には,様々な野鳥が飛来するが,今年の5月に行ってみると,サギの群れの中にアマサギが2羽,混じっていた.甲子園浜自然環境センターから望遠鏡で観察するとオレンジ色の頭をした優美な姿が確認できた.アマサギは,通常,内陸の水田や池などに飛来し,海辺に飛来することはまずないとのことで,非常に珍しい光景であったようだ.

                     

地元散策 〜村上氏の世界〜

西宮市にある小河川「夙川」の河口近くに葭原(あしはら)橋という小さな橋がかかっている.村上春樹氏のエッセイ「ランゲルハンス島の午後」に登場する「趣のある古い石の橋」のモデルとされていて有名なのだ.昭和8年に架設され,昭和27年に改修されたコンクリート橋である.この橋が劣化し,数年前に補修することになった時,補修材の色あいなどをめぐって騒動になった.補修から数年経過してようやく色がなじんできた.村上氏の世界は守られた.