小澤正邦氏(第62〜64期副会長)コラム

2015年

今年のノーベル賞では2人の日本人の受賞で大いに言祝いだ。そのノーベルは若いころ、詩人を志したそうな。詩人と発明家、夢見るところで共通するのかな、と思う。 さて、研究者なるもの、対岸の華やぎをよそに、おのれの無才を嘆く夜もある。詩どころか、論文がなかなか書けない...クー、とか・・・。最近もらった歌集にあった一首を。 無能なるおのれを深く識る夜の哀しみにおり李徴とわれと広阪早苗(李徴は山月記に出てくる虎に変じた人物) ちょっと暗くなってみました。


世界新記録、チャンピオンデータ、を最良とするのはいろいろな世界でよくあること。研究はその最たるもので、それに人生×賭けるのが研究です、という人もいるようです。はたの人はどうみているのか。研究者の娘が、父を美しく詠んだ短歌がある。歌人俵万智の父上は、希土類磁性材料で高名な研究者で、企業の研究所長を務めた。  ひところは世界で一番強かった父の磁石がうずくまる棚  俵万智


2016年

岡崎

銀閣から南禅寺まで「哲学の道」を歩き、咲きはじめの桜を見た。途中、岡崎あたり、いまは街になっているが明治初期はのどかな場所だったらしい。歌人与謝野鉄幹の故郷はそこで、たしかこの方の三人目の妻が与謝野晶子で明星の歌人だとか、思いながら。いつかのその名残があるかみてまわろうと思う。

柔肌の女性

大阪堺の人、明治の歌人与謝野晶子は、歌集「みだれ髪」で、 やわはだの熱き血潮に触れもせずかなしからずや道を説く君 と学者先生を「誘惑」した? でも、それ以上にすごいのは、「君死に給うことなかれ」の詩です。女性のこころは、柔肌ではない。

あにいもうと

与謝野晶子の兄、鳳秀太郎は、三高から東大に行き、電気工学が専門で東京帝大教授、電気学会会長も務めた。鳳家では、いわば風俗歌人となった晶子との関係は微妙だったという、その兄と妹。

その日の成果

4月も半ばになり、桃の花を見に行きました。その傍で、梅がもう自分の枝いっぱいに実を付けていた。梅花を賞でてから、ほんの2ヶ月で成果を成す梅の木に感心してしまう。その日その日を大切にしよう、と思った。

帰心と鬼神

金曜日の夕方から遅く出る新幹線はかなり混む。多くは仕事帰り、実家へ帰る風で、単身赴任の中年も少なからずいるようです。 人は帰心を速度にしたり 水無月の闇ゆく最終「のぞみ」の帰心  米川千嘉子 席ごとに座る帰心のため、鬼神のような「のぞみ」も高速走行している。

材料学会

日本材料学会には本格的な鉄道ファンが多いとか、楽しい学会。新幹線「のぞみ」に、先端材料の一つ、炭素繊維複合材料が使われて(駆動車の1号と16号車台上)いるそうな。 カモノハシ炭素繊維が牽く「のぞみ」N700系に帰心を連れて (お粗末)