本学会には,以下の部門委員会があります.
部門委員会への入会は本会会員であることが必要です。未入会の方は入会手続きをおとり下さい。入会案内
※部門委員会活動報告:会誌「材料」6月号(Vol.70,6)掲載
部門・研究委員会名 |
委員長(所 属) |
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植松美彦(岐阜大学) |
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山崎泰広(千葉大学) |
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西山峰広(京都大学) |
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坂井田喜久(静岡大学) |
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井上博之(大阪府立大学) |
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勝見 武(京都大学) |
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梅村研二(京都大学) |
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高木知弘(京都工芸繊維大学) |
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西村 強(鳥取大学) |
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小林孝一(岐阜大学) |
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熊野知司(摂南大学) |
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コンクリート用混和材料部門委員会 |
鶴田浩章(関西大学) |
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高坂達郎(高知工科大学) |
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阿座上静夫(日鉄テクノロジー梶j |
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松村 隆(電気通信大学) |
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若杉 隆(京都工芸繊維大学) |
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田邉裕貴(滋賀県立大学) |
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堀中順一(京都大学) |
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岩本 剛(広島大学) |
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溝口孝遠(元神戸製鋼所) |
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梅野宜崇(東京大学) |
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喜多 隆(神戸大学) |
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田中勝久(京都大学) |
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田中基嗣(金沢工業大学) |
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大沼正人(北海道大学) |
部門担当者ページ
☆☆部門から本部へ提出する各種申請書等ダウンロードできます。☆☆☆
(令和3年6月現在)
本会に設置されている各部門・研究委員会は,各種材料の構造,物性ならびにその応用に関する研究を目的として日々活発な活動を行い,顕著な成果を挙げております.
以下に,それぞれの委員会の発足から現在までの活動内容および今後の活動方向を紹介するとともに,加入を希望される場合の要領についてもお知らせいたします.
疲労部門委員会 |
委員会の沿革と活動内容
本委員会の設立は,本会の前身である日本材料試験協会創立の翌年,昭和28年5月であり,本会で最も長い歴史を有している.本委員会設立以来,既に70年近く経ち,委員も設立当初の30名足らずから,現在では年度によって多少増減はあるものの約200名程度となり,本会において最大の委員会に発展してきている.
本委員会では,疲労事故の防止と疲労問題の解決に向けて,大学・研究所のみならず,設計の現場において疲労の問題に携わっている幅広い関係諸氏が多数参加され,活発な活動を行っている.活動内容としては,既存の材料のみならず新素材も含め,それらの疲労現象の本質や疲労破壊の機構に関する基礎的研究から,現場における疲労設計技術の開発に関する応用的研究に至るまで,広範な疲労に関する課題を取り上げて情報交換を行うとともに,社会的ニーズにも応えうるような活動を行っている.原則として年5回開催している委員会では,委員会運営や疲労研究に係わる諸事項を審議するとともに,最近の話題を取り上げた研究討論会を企画している.また,企業や研究所等における関連施設の見学も随時実施している.
本委員会による企画事業
●疲労シンポジウム
本会の破壊力学部門委員会と協調し,隔年開催で秋に「疲労シンポジウム」を企画している.同シンポジウムでは,特に若手研究者の今後の更なる活躍を奨励するため,当該年度末で37歳未満のシンポジウム講演者のうち審査により優秀と認められた方に「優秀研究発表賞(学術分野,技術分野)」を5名程度の方に授与している.受賞者には賞状ならびに副賞として楯を授与している.また,平成20年以降,3年間隔で中国の研究者と合同で日中合同疲労シンポジウムを併設しており,昨年2020年9月に第5回日中疲労シンポジウムを開催予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から開催延期とし,本年2021年9月沖縄にて開催する方向で調整中である.
●疲労講座
疲労問題に関する啓蒙と疲労の基礎的知識を広く普及することを目的とし,疲労講座を開催している.併せてその時々のトピックスや開催地での地域性も織り込んで,多彩な企画を行い,毎回好評を博している.近年は基礎的な内容をベースとした「初めて学ぶ金属疲労」というテーマで初心者にも分かり易い講座を開設し,好評である.今後,これまで疲労問題に触れてこなかった方々への勉強の場として提供していくことを計画している.
●初心者のための疲労設計講習会
本講習会は,疲労問題に直面している若手技術者,あるいはこれから直面すると予想される技術者を対象に企画したものである.本講習会では,疲労の基本現象から実際の設計手法に至るまでの基礎をできるだけわかりやすく講述し,また演習も実施することにより,基礎的な疲労設計について修得いただけるようにしているので,積極的にご参加願いたい.なお,本会制定の技能検定・認証制度による材料試験技能士1級(疲労試験)を取得するには,事前に本講習会を受講しておく必要がある.
●通常総会・学術講演会併設行事
本会の通常総会・学術講演会の併設行事として,関連部門委員会とも連携を取りながら公開研究討論会,あるいは学術講演会ではオーガナイズド・セッション等も企画担当し,学術講演会活性化に対しても積極的に貢献している.
分科会活動
本委員会には,特定のテーマを集中的に討論できる場を提供するため,分科会を設置している.現在は,各種表面改質材の疲労寿命評価式の確立を目的とした「疲労に関する表面改質分科会」,自動車部材の接合部の疲労に対する信頼性問題を検討する「接合材の疲労強度に関する研究分科会」が活動しており,各分科会において活発な研究・検討がなされている.
出版等事業
●一般図書
本委員会が中心となってこれまでに出版してきた主な書籍としては,「疲労試験便覧」,「金属の疲労」,「金属材料疲労設計便覧」,CJMR Vol. 1, Current Research on Fatigue Cracks,CJMR Vol. 2, Statistical Research on Fatigue and Fracture, CJMR Vol. 14, Cyclic Fatigue in Ceramics,「疲労設計便覧」,ならびに「初心者のための疲労設計法(第4版)」がある.また,後述のデータベースに基づいて「金属材料疲労強度信頼性設計資料集」も発行している.さらに,1955年から2001年にかけて約50年分に及ぶ「材料の疲労に関する研究の趨勢」を毎年編集・刊行してきた.この書籍の特徴としては,疲労研究の歴史的推移が明確に把握できるだけでなく,掲載の研究論文については抄録を含む書誌情報があるため,疲労研究の実施に際して関連情報を容易に入手できるというデータベース的な役割も果たしてきた.本書についてはバックナンバー(一部品切れ)があるので,疲労研究の動向にご関心のある方は是非これらをご活用いただきたい.また,平成27年度には200語以上の金属疲労に関する専門用語を網羅した「初心者のための疲労用語の解説」を新たに発刊した.本書はCD-ROM媒体であり,パソコンを利用したブラウザ閲覧により知りたい用語を簡単に検索可能であり,さらに各用語は相互にリンクしているため,クリック一つで波及的に全体が理解できる仕組みとなっている.疲労問題に関する初学者や疲労設計に携わる技術者に是非ご活用いただきたい.
●データベース
本会の信頼性工学部門委員会との共同により1982年に「金属材料疲労強度データ集」(1〜3巻) を,1992年には「同データ集」の4巻,5巻を,さらに1984年には「金属材料疲労き裂進展抵抗データ集」(1巻および2巻) を,それぞれ出版した.これらのうち疲労強度データ集に収録されたデータについては,本委員会に設けられたデータベース管理委員会がその後デバッグ作業を精力的に行い,既刊の1〜5巻を再編集したDatabook on Fatigue Strength of Metallic Materials (Vol. 1〜Vol. 3) として,平成8年に本会とエルゼビア社による共同出版を行った.これにより,頒布も国内のみならず広く海外にも向けて開始し,好評を博している.また,本会の信頼性工学部門委員会と共同で,全面改訂版(1996年版)疲労データベースの全ての内容をサーバーへ移植し,インターネットを介してデータを検索し,解析するための「Web版疲労データベースシステム」を完成させ,有償にて頒布している.現在,先進材料の疲労強度ならびに超高サイクル領域の疲労強度データの収集,公開に向けた作業を行っている.また,セラミックス強度に関して収集したデータをもとに,Ceramics Strength Database (Vol. 1) も刊行している.なお,上記のいずれのデータ集についても,それに収録された全データはコンピュータ可読のデータベース化がなされており,電磁気媒体による頒布も実施していることを付記する.
●学会標準
本会の創立50周年記念事業の一環として学会標準の策定も行った.本委員会としては,平成13年に「圧子圧入法によるセラミックスの残留応力測定法」を,また信頼性工学部門委員会と共同で平成14年には「金属材料疲労信頼性評価標準−S-N曲線回帰法−」をそれぞれ発刊している.なお,後者については改訂版を発行するともに,平成19年にその英文版 Standard Evaluation Method of Fatigue Reliability for Metallic Materials-Standard Regression Method of S-N Curvesを出版した.多くの方々にご利用いただき,これらの標準に対して貴重なご意見等を賜りたい.
本委員会への加入方法
新委員の委嘱は委員会の承認を得ることになっている.ただし,本委員会の委員となるには本会の会員でなければならない.また,委員会費として個人委員として加入される場合は年間1,500円を,企業委員として加入される場合は年間25,000円を,それぞれ納入いただくことになっている.
高温強度部門委員会 |
沿革と趣旨
本会は,1954年に「クリープ部門委員会」として発足した.クリープに限らず高温疲労など高温強度全般にわたる問題を扱うようになったことから,1959年に「高温強度部門委員会」と改め,今日に至っている.この間,我国を代表する多くの研究者・技術者を輩出し,我国のみならず世界における高温強度研究をリードしてきた.また,高温機器の信頼性向上など産業界の発展にも寄与してきた.本会は“学会活動を通じた社会貢献”を趣旨としており,産学交流の機会を提供すると共に,企業や大学における高温強度に係わる技術の伝承・習得を支援している.以下に,その活動の概要を紹介する.
部門委員会および表彰制度
本会の活動内容を委員の皆様に協議していただく場として,部門委員会を年5回開催している.同時に,講演会を開催しており,活発な討論の場を設けている.また,将来性に富む研究成果を挙げた人に「躍進賞」,研究開発において顕著な業績を挙げた人に「貢献賞」,さらに,社会の発展および人材育成に功績を残した人に「功労賞」を設け,毎年,後述の高温強度シンポジウムの場で表彰している.昨年,第31回躍進賞を受賞されたのは張聖徳氏(電力中央研究所),貢献賞は澤田浩太氏(物質・材料研究機構),功労賞は藤山一成氏(名城大学)と服部博氏(神戸工業試験場)が,それぞれ受賞された.
研究発表
毎年12月初旬に「高温強度シンポジウム」を開催している.学界のシーズと産業界のニーズの交流の場として重要な行事であり,例年,活発な議論が行われている.また,本シンポジウムは人材育成の場としても重要であり,若手の優秀な発表に対して「ベストプレゼンテーション賞」を設けている.本シンポジウムは1959年に始まり,昨年,第58回をSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(和歌山県西牟婁郡白浜町)において対面とオンラインのハイブリッド形式で開催し,68名の参加があった.今年も11月25,26日に開催を予定している.2016年度までの講演前刷原稿を収録したDVDは,本分野の研究の趨勢や変遷を知る貴重な資料であり,本分野に携わる方に購入をお勧めする.
その他,研究発表の場としては,毎年5月に開催される学術講演会のオーガナイズドセッションがある.また,論文投稿の場としては,会誌「材料」に2年に1回のペースで「高温強度特集号」を企画し,最新の研究成果を発信しているので,活用いただきたい.最新のものは今年の2月号に掲載されている.
ワーキンググループ活動
本会では,ワーキンググループ活動を積極的に推進している.活動は課題研究あるいは技術伝承を目的とするものと,試験法標準およびデータベースを社会に提供するものとに大別される.これらの活動に興味をお持ちの方は是非,参加いただきたい.また,活動の成果は報告書として発刊されているので,興味のある方は購入されたい.これまでに設立されたワーキンググループを目的別に列挙する(括弧内は設立年,◎は現在も活動中).
試験法標準策定および連載講座発信
ワーキンググループ活動等を通じて,これまでに作成した試験法標準およびデータベースを以下に列挙する(括弧内は発刊年).「はんだの引張,クリープ,低サイクル疲労,クリープ疲労試験法標準および同データベース」(2000, 2004),「高温低サイクル疲労試験法標準」(2019年改定),「微小サンプルクリープ試験法標準」(2012).「電子後方散乱回折(EBSD)法による材料評価のための結晶方位差測定標準」(2016),「高温クリープおよびクリープ疲労き裂進展試験法標準」(2016).「はんだのミニチュア試験法標準」(2020).
また,会誌「材料」には,時代の要請に応じた課題について第一線の研究者による解説を連載講座として発信している.これまでに連載された課題を列挙する(括弧内は発刊年).
「構造物の高温強度について」(1969),「金属および合金の高温変形挙動」(1981),「高温機器設計の現状と将来」(1987),「高温変形のコンピュータシミュレーション」(1995),「高温破壊のコンピュータシミュレーション」(1995),「超あるいは極の技術と高温強度」(2002),「熱疲労破壊の新展開」(2007),「高温機器における劣化・損傷の検出と寿命診断」(2009),「高温機器における余寿命診断技術開発の最前線」(2012),「伝承すべき高温材料試験技術とその現状」(2015),「高温強度試験にかかわる標準化・規格化への取り組み」(2017),「溶射コーティングの歴史と展望」(2021).
さらに,本会またはワーキングが出版した教科書や報告書等の図書がいくつか発行されているので,内容は本会ホームページを参照されたい.
国際交流
1992年から中国機械学会高温強度部門と日中高温強度シンポジウムを開催してきた.第1回(1992年洛陽),第2回(1995年長岡),第3回(1998年南京),第4回(2001年つくば),第5回(2004年西安),第6回(2007年仙台),第7回(2010年大連),第8回(2013年旭川),第9回(2016年長沙)と回を重ね,第10回の記念大会を2019年10月25日〜29日の期間で鹿児島大学を会場として開催した.日本,中国に加え,メキシコ,ドイツ,チェコから95名が参加し,これまでで最大の規模で盛会に終えた.次回は2022年中国・成都で開催予定である.
技術伝承支援
企業や大学において高温強度に係わる技術を伝承・習得することが難しくなっているため,本会はこれを支援すべく,「若手研究者および技術者のための高温強度講習会」を2008年(第1回),2010年(第2回),2012年(第3回)に明石市で,2014年(第4回),2016年(第5回),2018年(第6回)に叶_戸工業試験場播磨事業所を借用して開催した.2日間で第一線の研究者から高温強度の基礎から応用を学び,関連する実験技術の基礎を習得できるように企画されている.2016年からは,3日目に参加者が実際に高温引張試験,クリープ試験,低サイクル疲労試験の各装置を操作する講義を新たに追加し,実習を充実させた講習会を実施した.第7回の開催を2020年に予定していたがCOVID-19の影響を受け,2021年に延期した.本年,オンライン形式での開催を予定しているので,是非活用されたい.
技術相談窓口
2014年より,技術相談窓口を本会ホームページ上に開設した.高温強度に関する問題について,本会委員から選ばれた回答者が相談に乗るものである(相談は無料であるが,回答内容およびそれに伴い発生した相談者の業務上の責任は負わない).気軽にご相談頂きたい.
以上,本会の活動を紹介したが,より多くの皆様が入会されることを期待している.現在の会員構成および人数は,一般会員(個人委員)69名,法人会員37団体(全登録者数87名),全会員数156名である.ご興味のある方は,本会ホームページにアクセスされたい.
高温強度部門委員会ホームページ
https://hightemp.jsms.jp/index.htm
PC構造部門委員会 |
PC構造部門委員会は,プレストレストコンクリート(以下PCと略記)構造と鉄筋コンクリート(以下RCと略記)構造,ならびにPCおよびRC構造技術を土木・建築領域にとらわれず,調査・研究することを目的としている.現在,委員会会員は36名である.
委員会
年4回程度開催し,主に,新技術と最新の研究動向を外部から招いた講師に紹介していただき,これに基づき多角的な議論を行っている.ここ数年のテーマを以下に示す;
2017年度:高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートのプレストレストコンクリート部材への適用,コンクリートの収縮メカニズムに基づくRC壁のひび割れ制御,鉄筋コンクリート造耐震壁の水平二方向加力実験,コンクリート構造物における補修・補強事例の紹介など
2018年度:「和」の伝統美が採用されたPCa架構の施工事例,ASR劣化したPC梁構造物のひび割れ密度とコアの力学特性を活用した曲げ耐荷性能評価に関する研究,プレキャスト部材を用いた組立式PC 桟橋,表層透気性における構造体コンクリートの耐久性評価,実大コンクリート壁における各種の透気性試験に関する共通試験など,
2019年度:コンクリート中における鉄筋腐食のメカニズムと防食方法(京都大学 高谷哲氏),日本建築学会「暑中コンクリート工事における対策マニュアル 2018」について:マニュアルの概要と適用条件(竹中工務店 岩清水隆氏),日本コンクリート工学会近畿支部「暑中コンクリート工事の現状と対策に関する研究専門委員会」の成果(ガイドライン)報告(JR西日本 半井恵介氏),PCaPC技術により実現した「伝統的な教会の姿」および「大空間を有する学校建築」の施工事例(オリエンタル白石 島田安章氏),橋梁建設の生産性向上と耐久性向上に関する取り組み(三井住友建設 永元直樹氏)など
2020年:立命館大学コンクリート研究室と研究事例紹介 〜コンクリート中で発生する鉄筋腐食過程のモニタリング〜(立命館大学 川崎佑磨氏),歴史的建築物の外壁を保存しながらの建替を実現した構造形式,巨大地震に対応する免震構造,複雑な形状を有するホールの構造設計(竹中工務店 赤澤資貴氏)
現場あるいは工場見学会
年に1回ないし2回,PC構造技術に関する見学会を開催している.ただし,近年では適当な見学先に恵まれず,開催できない状態が続いている.開催履歴としては,2011年3月に三重県の富士ピー・エス工場,2012年3月に神鋼鋼線工業(株)尼崎工場,2013年11月に新名神高速道路武庫川橋の現場,2014年10月に吹田市立スタジアムの現場,2015年6月に新名神高速道路の京田辺高架橋の現場を見学した.
(委員会ホームページ https://pckouzou.jsms.jp/index.html)
高分子材料部門委員会 |
本委員会は1950年にレオロジー部門委員会として発足し,日本レオロジー学会が設立された後,1983年に名称を高分子材料部門委員会と改め,活動範囲を広げ現在に至っている.本委員会は,高分子材料の諸問題の解決と関連技術の向上に関する討論を活動の基本としてきた.高分子は金属および無機材料と並ぶ三大構造材料のひとつである.近年,材料としての耐久性・信頼性が飛躍的に改善されたが,まだ多くの未解決の課題を抱えている.この問題の解決は本委員会の中心的関心事項のひとつである.さらに,最近では技術の高度化および多様化に伴い,種々の機能をもつ高機能性高分子材料の開発が期待されている.また,地球環境保護の観点から,リサイクル高分子,バイオマスプラスチック,および生分解性プラスチックの開発も進んでいる.本委員会では,構造材料と機能材料という高分子材料の 二つの側面を,有機的に関連づけ広く深く討論する場を提供している.
2020 年度の活動は以下の通りである.
第188回高分子材料部門委員会および第103回高分子材料セミナー
本セミナーは,「ガラス状高分子の力学物性と破壊現象」と題し,2020年6月8日に名古屋工業大学で実施する予定であったが,COVID-19の状況を鑑みて開催を中止し,2021年同時期の開催へ延期した.
第189回高分子材料部門委員会および「高分子材料・炭素繊維複合材料の耐久性評価」に関する講習会
本講習会は,当委員会で定期的に実施しており,2020年11月11日に大阪市立大学文化交流センターで実施する予定であったが,COVID-19の状況を鑑みて開催を中止し,2021年同時期の開催へ延期した.
第188回高分子材料部門委員会 第103回高分子材料セミナー「頑張る若手の”hola(オラ)が研究”自慢5」発表15件(2020年12月21日,web開催)
高分子材料部門委員会では“若手研究者の登竜門”として,学生を主とした若手のための研究発表の場を設けている.今年度も若手研究者が最新の研究成果について発表するセミナーを開催した.昨年度に引き続き厳正なる審査で認められた研究発表に対し,若手優秀発表賞を授与した.
令和2年度 若手優秀発表賞
@研究題目:「主鎖にアゾベンゼンユニットを導入した非晶性ポリエステルの光可塑化現象」
受賞者 :名古屋工業大学大学院 木村 友也 氏
A研究題目:「PEG 鎖グラフトポリメチルアクリレートのレオロジー特性に与える金属塩添加効果」 受賞者 :名古屋工業大学大学院 丹羽 将徳 氏
第104回高分子材料セミナー(2021年1月14日,web開催)
本セミナーは,高分子材料部門委員の話題提供の場とし,現在行っている研究活動について2名の講師にご講演いただいた.
@「せん断流動場における高分子の構造形成」
山形大学 松葉 豪 氏
A「ガラス状高分子の非線形粘弾性機構」
大阪電気通信大学 吉岡 真弥 氏
また,上記のセミナーや講習会の他に,当部門委員会では編集委員会との連携のもと,隔年で「高分子」特集を掲載しており,2021年1月号の会誌「材料」に「高分子」特集を掲載した.
これらの活動を通じて,高分子材料の製造,構造と機能,物性と加工についての情報と討論が深まり且つ広がり,技術の発展に寄与することを願っている.関連分野の研究者・技術者のますますの参加を期待する.
X線材料強度部門委員会 |
本委員会の沿革と活動目的
X線材料強度部門委員会は,1961年(昭和36年)にX線応力測定部門委員会として発足し,1965年と1977年に委員会の名称を変更して現在に至っており,2021年で設立60年を迎える.本委員会は,X線回折を主とする材料評価手段を通じて材料の強度特性を解明しようとする学術分野,すなわちX線材料強度学に関する学術の発展および技術の向上に寄与することを目的としている.
本委員会への加入方法
本委員会への入会には本委員会委員の推薦を必要とし,委員会に諮り了承を得ることになっている.ただし,本委員会の委員となるには本会の会員でなければならない.また入会後は,資料作成費(委員会費)として,大学・官公庁等および中小企業基本法で定義される中小企業者,小規模企業者から個人委員として加入される場合は年間2,000円,企業から会社委員として加入される場合は年間30,000円の納入が必要となる.企業から会社委員を加入される場合は,さらに最大3名の担当委員の加入が可能である.なお,現在,新規加入者には本委員会で刊行している後述の標準4冊を進呈している.
企画事業と活動内容
【定例委員会】
本委員会は,毎年3回の定例委員会を開催している.定例委員会では,幅広く世の中の研究動向を把握するため積極的に部門委員会以外からも講師を招いて講演会を開催し,委員の研究活動の活性化に努めている.令和2年度はコロナの影響のため,下記委員会をネット開催した.
第195回X線材料強度部門委員会
日時:2020年4月17日(金)
会場:メール会議, 参加者85名
審議内容:新体制発足の報告およびコロナ流行のため7月の第54回X線材料強度に関するシンポジウムおよび委員会等の開催延期を決定.
一般講演:メール審議のため一般講演は行わなかった.
第196回X線材料強度部門委員会
日時:2020年6月19日(金)
会場:Web会議,参加者23名
審議内容:2020年度(新)年間行事日程の承認および委員会活動の具体的検討を開始.
一般講演:審議事項が多いため,講演会は行わなかった.
第197回X線材料強度部門委員会
日時:2020年12月4日(金)
会場:Web会議,参加者20名
●一般講演
第198回X線材料強度部門委員会
日時:2021年2月19日(金)
会場:Web会議,参加者23名
●部門委員会賞記念講演会
【X線材料強度に関するシンポジウム】
第54回のシンポジウムを 2020年 12月3日(木),4日(金)の2日にわたり初めてのWeb開催で行った.ネット開催での参加者の負担を考えて,今回は両日とも午後のみの開催とし,講演件数19件,参加者50名であった.表面改質,その場測定,微細構造,接合,複合材料,新素材,測定法,表面層など幅広い分野に関する講演と熱心な質疑応答がなされた.このシンポジウムでは若手研究者による講演に対し最優秀発表賞を設けており,厳正な審査の結果,2020年度は,学生(学部学生および博士前期課程学生)の区分で静岡大学大学院の岩崎慎之介氏が,一般の部で東北大学院(YKKAP梶jの小田省吾氏の2名が受賞された.また,2021年度の第55回X線材料強度に関するシンポジウムはX線委員会の発足60周年記念として開催予定である.開催方式は原則ネット開催とし,コロナの終息宣言等がなされた場合はハイブリッド(会場・ネット併用)でおこなう.
【X線材料強度に関する討論会】
第57回X線材料強度に関する討論会を2021年 1月28日(木)にネット開催(午後のみ)として行った.今回の講演会ではX線委員会のメンバーが2019年度の日本材料学会論文賞において,論文賞,論文奨励賞および技術賞の3件を受賞し,その記念講演として開催した.1件約50分の時間をかけて講演を行い,それぞれの研究活動において論文からだけではわからないノウハウや周辺情報も含めて充実した報告内容となった.ネット開催にもかかわらず活発な質疑応答があり,名実ともに最高レベルの研究報告会であった.なお,今回の3件の論文賞受賞の内容は以下のとおりである.
【論文賞】
「二重露光法による粗大粒材の応力測定」
鈴木賢治(新潟大),菖蒲敬久(原子力機構),
城 鮎美(量研機構)
「材料」Vol.68, No. 4, pp. 312-317.
【論文奨励賞】
「X線回折による表面改質層の熱時効評価」
岡野成威(大阪大)
「材料」Vol.68, No.4, pp. 338-345.
【技術賞】
「Ni基超合金タービン翼の結晶方位測定技術の開発」
湯村友亮(三菱重工),栗村隆之
「材料」Vol. 68, No. 4, pp. 346-350.
小委員会活動
当委員会内では,平成26年度まで放射光小委員会,中性子小委員会,回折弾性定数データベース小委員会が活動していたが,平成26年度にて終了し,平成27年度からはそれぞれの分野での情報を共有する機能を残すように活動している.平成27年からはX線利用者支援小委員会及び二次元検出器小委員会が,平成28年度はラインプロファイル解析小委員会がそれぞれ発足し,活発に活動を展開してきた.活動の集大成としてX線利用者支援小委員会は2019年に最終報告書を提出して活動を終了.ラインプロファイル解析小委員会は会誌「材料」の第69巻3〜5号(2020年)に掲載された連載講座で小委員会活動の成果をまとめて発信し活動を終了した.また,二次元検出器小委員会は新たな学会標準である「cosα法によるX線応力測定法標準-フェライト系鉄鋼編-」を2020年2月15日に発刊し,発刊後すぐにX線委員会の委員全員に無料配布した.これで,本委員会の発刊した標準は材料学会標準および部門委員会標準をあわせて6冊目となった.さらに,2020年6月には「cosα法英文標準規格化小委員会」および「高分子材料応力測定小委員会」を立ち上げている.今後の活発な活動に期待したい.
出版等事業
本委員会は,当初よりX線回折を主要な手法として結晶質のさまざまな材料のひずみを測定し,残留応力や微視的変形機構を解明するために研究を続けている.回折面依存性,相応力,3軸応力および集合組織などX線応力測定の優位性を生かしながら,多種多様な材料を対象に研究を広げてきた.さらに,疲労損傷,塑性変形過程などの研究にも取り組んできた.これまでの成果は,「X線応力測定法」(養賢堂,1961年,1981年),「X線材料強度学 -基礎編・実験法編-」(養賢堂,1973年)にまとめられている.最近では,X線回折のみならずさまざまな手法による非破壊的な材料強度評価に関する研究を展開している.X線応力測定の実用化の面では,フェライト・マルテンサイト系鉄鋼材料,オーステナイト系鉄鋼材料,セラミックス材料へと応力測定の方法を適用してきた.1973年以来,これらの成果は「X線応力測定法標準」(鉄鋼編,セラミックス編)日本材料学会の標準としてまとめられている.また,中性子の透過力を生かし深部の応力測定の方法を検討し,その成果を2005年に中性子応力測定標準(X線材料強度部門委員会標準)としてまとめた.さらに,これまでの鉄鋼およびセラミックス材料のX線応力測定法標準を世界に普及し,また国際社会での産業界の活動を支援するために,Standard Method for X-Ray Stress Measurement(英文版X線応力測定法標準)を発行した.2019度は,上記の二次元検出器小委員会の活動成果として,「cosα法によるX線応力測定法標準―フェライト系鉄鋼編―」を発行した.
表彰制度
本委員会ではX線材料強度に関する研究および技術において顕著な業績を挙げた方や将来の発展が期待される成果を挙げた方を対象とした部門委員会賞(業績賞,研究・開発賞,功労賞)を設けている.2020年度はつぎの3名の方に授与した.功労賞 八代浩二氏(山梨県産業技術センター )「X線材料強度部門委員会運営と活性化への貢献」,功労賞 坂井田喜久氏(静岡大学)「cosα法によるX線応力測定法標準の規格化」,研究・開発賞 城鮎美氏(量子科学技術研究開発機構)「放射光を利用した単結晶・粗大粒の応力/ひずみ測定」となっている. 本委員会は,大学・高専,研究所,企業などの約80名の個人および会社委員から構成されている.本委員会の活動および最新の動向は,委員会のホームページ(https://x-ray.jsms.jp/)から知ることができる.特性X線のみならず,放射光,中性子,電子,レーザー,ラマン分光などによる非破壊的な材料強度評価に興味のある方,また,ひずみ・応力測定を必要とする方の入会を歓迎している.入会をご希望の方は現委員または日本材料学会へご連絡頂きたい.
木質材料部門委員会 |
木質材料部門委員会は,木材および木質材料に関する研究の推進と情報の交換を目的として,昭和37年4月に理事会の承認を得て発足し,同年5月には第1回の委員会を開催した.それ以来,約60年に亘って活発に活動し続けてきている.木材,および木材を原料とする木質材料や紙は,古くから建築,家具,楽器,包装や情報・文化の伝達材料として人々の生活を支えてきた.木材は基本的に再生産可能な資源であり,これを有効に利用することによって,永続的な利用が可能な極めて有用な材料になり得る.このような木質材料の利用が,人類の生存にとって極めて重要であるとの認識が近年高まりつつある.木材は,人類にとって最も身近な材料の一つである.木材が本来的に持っているヒューマン・フレンドリーな面は,人類との長い関わりによって築かれてきたものであり,今後も科学的裏付けの蓄積によって増々重視される特徴である.一方,地球上で最も豊富なバイオマス資源である木質バイオマスの生物・化学変換による化学品・エネルギー等の生産や高機能性・高耐久性木質複合材料の開発など,以前にも増して多くの異なる分野からの研究開発が必要となってきている.このような状況の中,多様な専門分野の研究者や技術者が集まる本委員会の重要性は極めて高い.木質材料部門委員会は,木材および木質材料に関係の深い大学や研究機関の研究者および企業の研究者・技術者など,約50名の会員から構成されている.会員相互の連携の強化による研究・開発の更なる活性化と利便性の向上を図ることを目的として委員会の企画・運営を行っている.これをより円滑に進めるために,本委員会では委員長の下に運営委員会を設け,原則として年3回の定例研究会を開催している.研究会には多くの会員および学生の参加を促すとともに,参加できなかった会員には講演要旨集を配布している.また,本委員会はその設立目的を達成するために,発足以来,会誌「材料」に特集「木質材料」の企画および発行を行っている.2008年度からは,木質材料に関する優れた業績に対して,本委員会から木質材料部門委員会業績賞を授与することとした.2020年度の業績賞は,細谷 隆史 氏(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)による「量子化学計算を用いたセルロース熱特性の微視的理解」に授与され,第305回定例研究会(2021年1月8日,日本材料学会)において表彰した.以下に,2020年度に開催した第303〜305回の定例研究会の活動状況を記す.
第303回定例研究会
2020年8月27日:オンライン開催(Zoomミーティング)
『樹を知り木を活かす』
古田 裕三 氏
(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
『木材利用へのイオン液体の応用』
宮藤 久士 氏
(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
第304回定例研究会(材料WEEK公開部門委員会)
2020年10月13日:ハイブリッド開催(京都テルサ(京都市)とZoomミーティングの併用)
『スイスにおける木材・木質系材料の研究活動』
三木 恒久 氏
(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)
『フランスLMGCにおける木材・木質系材料の研究活動と日本の木材物理研究の今後について』
杉元 宏行 氏
(愛媛大学大学院 農学研究科)
第305回定例研究会
2021年1月8日:オンライン開催(Zoomミーティング)
『木材の接触温冷感,地球温暖化抑制のベストミックスと生物多様性』
小畑 良洋 氏
(鳥取大学 工学部)
『木材細胞壁の形成機序』
高部 圭司 氏
(京都大学名誉教授)
木材などバイオマス系の天然素材をベースとした材料利用の新規開拓のためには,それらが生来有する階層的構造を正確に捉えた上で,潜在特性を発掘・解明していく基礎研究が重要である.分子レベルでの化学的改質からバルク体レベルでの応用利用に至る幅広い領域を網羅し,リニューアブル・エコ素材としての木材利用を多角的に促進させることが,木質材料部門委員会の役割である.
現在の委員長および運営委員会メンバーは,下記の通りである.
委員長:
宮藤 久士(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
運営委員会委員:
田中 聡一(京都大学 生存圏研究所:庶務幹事)
岡久 陽子(京都工芸繊維大学 繊維学系:会計幹事)
古田 裕三(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
杉村 和紀(京都大学大学院 農学研究科)
細谷 隆史(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
腐食防食部門委員会 |
腐食防食部門委員会は1962年10月に腐食科学と防食技術に関する研究者,技術者の研鑽と情報交換を目的として設立された.21世紀に入ると省エネルギーや省資源の意識が高まり,安全でかつ高効率な社会資本の再構築に向けた技術の再編により産業基盤技術としての腐食・防食に対する意義が高まっており,本部門委員会が貢献する領域はより一層拡大している.本部門委員会は2012年に設立50周年を経て,さらに活動を展開している.年6回開催される例会は2020年度までに335回,また随時開催する研究集会を61回実施している.2020年度の前半は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,予定されていた例会をいずれも延期としたが,2020年の9月からZoomミーティングを用いたオンライン方式で例会を再開した.以降,2021年3月に予定されている例会を含めると, 2021年度内に3回の例会と1回の研究集会を開催した.
本部門委員会は2019年末で法人委員(企業所属委員)46社,個人委員(主に大学・公的研究機関所属委員)29名から構成されており,委員の6割が企業所属であることが本部門委員会の特徴となっている.企業と大学・公的研究機関の連携のもとで,現場に密接に関連した腐食防食問題や防食技術・解析技術を中心として取り扱っている.例会・研究集会は腐食防食部門委員会委員のみに限定せず,一般の方々にも出席いただけるように公開としてきた.例会・研究集会では,毎回,各講演者に8から10ページ程度の予稿を執筆いただき,冊子体の委員会資料として発行している.委員会資料は本部門委員会の法人委員と個人委員ならびに当日の一般参加者に限って無料で配付している.毎回の委員会資料は,腐食防食に関する理論や解析技術の解説のみならず,市販の専門書やデータブックにはない数多くの現場の腐食事例を掲載しており,技術者,研究者にとって貴重な資料となっている.これらの例会,研究集会資料の出版以外に,書籍の編纂・刊行を行っており,2016年1月に「腐食防食用語事典」を刊行した.これは,本部門委員会内外の知識を結集して編纂したものであり,腐食防食の初学者を主な対象としつつも,重要な1,422項目を見出し語として,それぞれ専門家が簡潔に説明しており,腐食防食の研究・実務に携わる方々のみならず,腐食防食以外の分野の研究者・技術者にも十分役立つ内容となっている.
2020年度に開催した計3回(内1回は2021年3月に開催予定)の例会および1回の研究集会の概要は以下の通りである.
第336回例会(2020年9月15日,オンライン方式)
主題「プラントの外面腐食対策における最新の成果」第61回研究集会(2020年10月15日,オンライン方式)
主題「AI・機械学習を用いた腐食防食状態の推定および評価」第333回例会(2021年1月18日,オンライン方式)
主題「銅および銅合金の腐食事例」第334回例会(2021年3月26日(予定),オンライン方式)
主題「アルミニウム製熱交換器の腐食と防食技術」以上のように,本部門委員会は腐食防食分野において活発に活動しており,企業・個人技術者,研究者の方々の積極的な腐食防食部門委員会への参加をお待ちしている.部門委員会のホームページのURLはhttps://fushoku.jsms.jp/index.htmであり,行事予定や委員会活動について随時更新して広報している.
地盤改良部門委員会 |
「地盤改良」は土木・建築構造物を支える基礎として,あるいは,盛土や築堤などの構成材料として所定の要件を備えていないような地盤・土質材料の使用を可能とし,その状態を維持するために行う物理的,化学的および生物学的な処理をいう.地盤改良に係る分野は広範であり,また,その原理も多様であることから,地盤改良に携わる技術者や研究者は多岐にわたる技術・学術情報を迅速,かつ,的確に入手する不断の努力が肝要である.
地盤改良部門委員会は地盤改良を施す上での種々の問題点について学術的な調査,研究を行い,その適正利用の促進を設立の趣意としている.当該部門委員会の源は1962年11月に発足した土質安定材料委員会にあり,以後の多様化した地盤環境の創造・保全技術にも対応するべく1998年4月に現在の名称に改めた.これまでに320回の全体委員会を開催しており,このうち2020年度は2回開催した.全体委員会では審議や報告に加えて,数件の調査,施工,研究事例の講演・話題提供を行っており,登壇者は委員に限らず外部(企業,官公庁,大学等)からも招聘している.
2000年度以降,当該部門委員会が重きを置いている活動の一つに『地盤改良に関わる技術認証事業』がある.これは学会創立50周年を機に始めた事業であり,個々の技術や工法を公平かつ適正に評価することで技術開発の活性化に寄与しつつ,それらの建設現場への速やかな普及を図って技術水準の向上に資する旨を目的としている.評価の対象となる項目は,@地盤改良,地盤環境改善技術に関わる新素材,新材料,A地盤改良,地盤環境改善に関わる技術または工法,B汚染地盤の診断技術,汚染地盤修復技術,C廃棄物の地盤材料としてのリサイクル技術,であり,2020年3月の時点で18件の技術を認証した.
当該部門委員会が主催する『地盤改良シンポジウム』は隔年に開催している研究発表会で,委員長,幹事長および幹事委員を核に実行委員会を組織し,論文の募集・審査,プログラム編成・運営を行っている.このシンポジウムでは優秀発表者賞(対象年齢35歳未満)を設けて若手研究者・技術者の奨励を図るとともに,論文の中から10数編を選抜し,学会誌『材料』の地盤改良特集号への投稿を依頼している.なお,第14回のシンポジウムは2020年12月3日,4日にオンラインで開催した.
その他の活動として,当該部門委員会内に研究分科会を設置して図書の出版を行っている.近年では,2010年2月に「実務者のための戸建住宅の地盤改良・補強工法 −考え方から適用まで−」を刊行した.これとは別に,学会創立60周年と委員会設立50周年とを記念して,部門委員会の企画により発刊した論文集や書籍等を検索機能とともにDVDに収録し,2012年3月に「地盤改良技術の変遷」と題して発行した.
さらに,2014年1月より「未改良の埋立地や低平地の地盤沈下対策研究会」を編成し,未改良の既存埋立地の現状を調査し,地盤沈下を含むこれらの埋立地での課題を抽出,将来に向けての対策方法を提案することを主目的に活動を実施した.具体的には,沈下被害が顕著な国内5箇所(北海道,東北,中部,九州)の現地視察と情報収集を精力的に実施し,地域ごとの被害や地盤の特徴などについての調査・研究を行った.
以上のように,当該部門委員会では学術的,社会的に重要度の高い問題を取り上げて技術者,研究者の立場で慎重に検討を行い,その結果が地盤工学や材料学を含めた建設分野全体への貢献につながるべく,将来にわたり積極的な活動を展開していくことにしている.なお,2020年3月時点において,当該部門委員会は産学関係者を中心に118名に及ぶ委員で構成されている.
最後に,地盤改良部門委員会への加入について,通常は“当人からの申請”もしくは“委員からの推薦”に拠り,いずれも部門委員会に諮って承認を得る手続きを採っている.なお,委員に配布する資料の作成・印刷費などに賛助会員には年額20,000円を,個人会員には2,000円をご負担いただいている.地盤改良に限定せず,広く地盤や土質材料に直接あるいは間接に関与されている方々のご参加を心待ちにしている次第である.
コンクリート工事用樹脂部門委員会 |
建設材料の中で最も多く利用されている材料の一つであるセメントコンクリートは,種々の合成樹脂材料と併せ用いることによって,各々の単独使用では得ることのできない各種の優れた性能を発揮させることができる.コンクリートと合成樹脂との使用に当たっての組合せとしては,次のような形態が一般的である.
以上のように樹脂は多方面で利用されており,これらの用途のそれぞれで要求される目的・方法に適する樹脂の種類も多い.しかし,細部ではこれらの樹脂の持つ性能は異なる点が多く,しかも,目的・方法に対して必要とされる性能についてもまだ明確にされたとは言い難い面を持っている.このため,コンクリート工事に樹脂を利用するうえでの問題点について調査研究を行い,樹脂の適正利用について検討し,さらにこれら樹脂の用途に応じた試験方法ならびに使用指針の作成を目的として1963年(昭和38年)2月に本委員会は設立された.
委員会の活動成果として,1967年(昭和42年)には“コンクリート構造用接着剤(エポキシ樹脂)試験方法および施工指針(案)” を作成した.また,ポリマーセメントコンクリート小委員会およびレジンコンクリート小委員会を設け,“試験室におけるポリマーセメントモルタルの作り方”,“ポリエステルレジンコンクリートの強度試験用供試体の作り方”など計10種のJIS原案の作成に協力し,1978年(昭和53年)4月にJIS A 1171〜1174,JIS A 1181〜1186としてこれらの制定をみている.2000年(平成12年)10月〜2002年(平成14年)3月にはレジンコンクリート関連JIS改定等検討WGを設け,JIS A 1181〜1186の統合改正に協力し,2005年(平成17年)には統合された新たなJIS A 1181が制定された.一方,レジンコンクリート設計(施工)小委員会を設け,1985年(昭和60年)に“ポリエステルレジンコンクリート構造設計計算指針(案)”を,1991年(平成3年)に“ポリエステルレジンコンクリート配合設計の手引き(案)”を作成した.2002年(平成14年)10月〜2005年(平成17年)5月にはレジンコンクリート関連事項検討WGを設け,前者を改訂し“レジンコンクリート構造設計指針(案)”を作成した.なお,本指針(案)については,2008年に英訳版を作成した.また,2014年(平成26年)にJIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)の改正小委員会を設け,2016年(平成28年)に改正を行った.補修材料関連としては,1989年(平成元年)3月には,阪神高速道路公団の委託のもとに設けた橋梁用樹脂小委員会によって,“コンクリート構造物の表面保護工便覧(案)・同解説”および“コンクリート床版防水工設計施工指針(案)・同解説”を作成している.さらに,この小委員会を発展的に改組して補修用樹脂小委員会を設け,その成果として,1995年(平成7年)には“コンクリート構造物の診断と補修−メンテナンスA to Z−”を出版し,これをもとに,翌1996年(平成8年)3月には日本材料学会関西支部との共催で講習会を開催した.さらに,表面被覆材,ひび割れ注入材・充てん材および断面修復材などの補修材料の性能試験方法に関する土木学会規準の作成に協力し,これにあわせて,2006年(平成18年)より表面被覆材の共通試験を開始し,現在に至っている.なお,共通試験の一部成果について,第8回高性能・高靭性コンクリートに関するシンポジウム(2008年10月)の技術展示にてポスター発表を行うとともに,これらの成果も踏まえ,2020年(令和2年)10月に「コンクリート技術者のための表面被覆材料入門」テキストを発刊し,第6回材料WEEKの一環として講習会を開催した.
シンポジウム関連としては,1996年(平成8年)〜2000年(平成12年)に,日本学術会議材料研究連合会においてコンクリート構造物の補修,補強,アップグレードに関するオーガナイズドセッションを開催したが,これを発展させ,2001年(平成13年)10月に“第1回 コンクリート構造物の補修,補強,アップグレードシンポジウム”を開催し,2020年(令和2年)までに20回の開催を重ねている.2015年(平成27年)以降は,材料WEEKの一環として開催している.2003年(平成15年)10月開催の第3回以降は,投稿論文に対して査読を行うことにより,「コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集」として発刊し,内容をさらに深化している.また,第10回より,最も優れた論文の著者に対して最優秀論文賞を授与し,きわめて質の高い論文報告集として認識されるに至っている.第20回は,コロナ禍での開催となり,初の全面オンライン開催となった.いくつかの第20回記念行事は次年度に持ち越しとなったが,記念行事の一環として,冊子体で発刊されていた第1巻から第17巻を電子化して参加者に提供した.
本部門委員会では,学校,官公庁関係者,設計および施工技術者,材料および製品メーカーなど,外国からの出席者も 含めて参加し,樹脂ばかりでなく,ゴム,繊維,なども視野に入れた活発な活動を行っている.今後の活動としても,コンクリート構造物の計画,設計,施工,維持管理において,合成樹脂,ゴム,繊維の特性を有効に利用した新しい種々の使用方法を検討するとともに,コンクリート・樹脂・ゴム・繊維複合系の耐久性能,変形性能,各種強度の把握など様々な問題を取り上げ,本委員会と小委員会,または他関連委員会との合同委員会活動を適宜組合せて運営する予定である.本部門委員会への加入に際しては,形式的には本部門委員会開催時に部門委員会の承認を得ることになっている.関心を持たれる会員の加入の申し出をお待ちしている.本部門委員会の年会費として,日本材料学会の年会費(正会員または賛助会員)に加え,20,000円(部門委員会の賛助会員:民間会社から加入する,日本材料学会の賛助会員.1社につき何名でも参加可)または2,000円(部門委員会の正会員:学校・官公庁等から加入する,日本材料学会の正会員)をいただいている.なお,小委員会についても,別途会費を頂いている.
岩石力学部門委員会 |
岩石力学部門委員会は日本材料学会第11期(1962年)に設立され,50年以上続く歴史のある委員会である.この委員会には理学,土木工学,資源工学を中心とした様々な分野の研究者,エンジニアが参加し,毎回1〜2題の講演をいただいている.また,年に1回は委員会を兼ねて,岩石・岩盤に関わる施設,構造物等の現場を見学させていただき,現地の方々との意見交換を行っている.
さて,材料学会の中にあって,「岩石」とは何の材料なのか,ということであるが,例えば,山岳地帯の鉄道や道路を通すためのトンネル,揚水式発電所の発電機を設置する大規模地下空洞,石油・天然ガスの地下備蓄空洞などは空洞周辺の岩盤を構造の一部として取り込むことにより,地下構造物として安定する.掘削後,空洞内部に設置される吹き付けコンクリート,ロックボルトなどの支保が岩盤と一体となり,空洞周辺の岩盤は構造部材として地下構造物の安定をもたらすものである.これが,岩石を材料として扱う所以である.
構造物としての岩盤(岩石)は,これを取り扱う上で重要かつ難しい問題がある.実験室における試験片としての岩石と,実際のトンネルなどの構造物として扱うスケールでの岩盤の力学的な挙動は大きく異なったものとなる.異なる原因は,マクロな亀裂の問題,地下水の状況,その他,種々の要因がある.この試験片と岩盤の挙動の乖離を埋めるべく,地道な基礎研究,実験,現場での計測・観測などが数多く行われている.
これらの研究内容は多岐にわたっている.岩石力学の基本となる,岩石の破壊にともなう亀裂進展などに関する解析および実験による研究,地下構造物の挙動についての計測と解析,応用分野であります降雨災害や落石災害など斜面防災に関わる研究,トンネルの施工管理に最新の画像処理技術を応用する研究などである.また,過去の見学先についても,TBMによる長大トンネルやLPG地下備蓄の岩盤タンク建設現場,放射性廃棄物の深層処分研究サイト,山岳地帯での大規模砂防事業,実物大振動破壊実験施設,その他,幅広い分野で,内容も新規建設プロジェクト,維持管理,防災と多種多様である.
毎回の講演題目について同様であるが,近年,特に地震に関する話題が増え,地震発生メカニズムの解明,地震によるトンネルなど地下構造物の被害発生状況,また,その補修・補強などについて多数発表いただいている.
今年度の岩石力学部門委員会においては,4 回の委員会(第237回〜第240回)を開催したが,新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の影響などから,3回の委員会でそれぞれ1題の講演会をオンラインで企画し,各委員による活発な質疑応答および意見交換がなされた.また,恒例の見学会はやむなく開催を見送ることとなった.以下,部門委員会活動の概略を紹介する.
第69期学術講演会では,「岩石力学とその応用」というタイトルのオーガナイズドセッションを主催した.立命館大学教授小笠原宏先生の基調講演「地下3 km 以深の太古代泥質堆積岩中のランプロファイアー上で発生したM5.5 地震の余震発生帯掘削調査」を含む計6件の講演の予定であったが,残念ながら,口頭での発表は中止となった.
第238回部門委員会(令和2年7月31日開催)では以下の講演が行われた.
「室内水圧破砕実験におけるAE測定と解析」
京都大学 防災研究所 助教
直井 誠氏
第239回部門委員会(令和2年11月6日開催)では以下の講演が行われた.
「含有する粘土鉱物の種類と構造に着目した岩質材料の力学特性評価」
鳥取大学 学術研究院工学系部門 准教授
河野 勝宣氏
第240回部門委員会(令和3年1月29日開催)では以下の講演が行われた.
「熱・水・応力・化学連成数値シミュレータを用いた岩盤の長期透水特性予測」
大阪大学 大学院工学研究科 助教
緒方 奨氏
このように本部門委員会は,岩石力学はもとより,多岐にわたる幅広い分野でその時々のトピックスを活発に議論する場を提供している.また,委員にオブリゲイションは無く,毎回の講演題目により自由に参加いただき,委員間の交流の場となっている.さらに,毎年新規の会員を受け入れており,委員会の活動をより活発なものにしている.会員の皆様にはぜひ本部門委員会への加入をお願いするとともに,周辺の研究室の学生や職場の若手エンジニアに積極的に参加を勧めていただきたい.
塑性工学部門委員会 |
塑性工学部門委員会(委員長:志澤 一之,慶應義塾大学)は,材料の塑性に関する基礎研究(材料の微視的組織観察,解析,塑性変形のメカニズムの解明・モデリングおよびそれらに基づくマイクロ/メゾ/マクロ塑性力学の構築)からその応用(材料設計・創製技術,塑性加工技術,機器構造物塑性設計,マルチスケールモデリング)にわたる広範囲なテーマについて関心を持つ大学・公設研究機関および企業の研究者,技術者から構成されている(会員数約70名).当部門委員会では,3つの分科会:塑性力学分科会(主査:佐久間 淳,京都工芸繊維大学),材料データベース研究分科会(主査:岡村 一男,日本製鉄),地盤力学分科会(主査:岡 二三生,防災研究協会)を中心に活動を進めている.これらの分科会の担当で,第69期(2020年度)に開催された研究集会は以下の通りである.
※令和2年6月26日(金)に予定していた第69期第1回塑性工学部門委員会(第91回材料データベース研究分科会)は,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,各所属機関での制限解除の見通しがたった後に延期となった.
その他,下記の講演会等に関する活動も合わせて行った.
なお,平成23年度より,シニア会員特典として,65歳以上の個人委員の部門運営費分担金(年会費)が無料となっている.また,平成24年度より,部門委員特典として,部門委員会での講演ハンドアウト資料が部門ウェブサイト(https://sosei.jsms.jp/)から閲覧できるようになっており,本年度も引き続き運営している.
コンクリート用骨材部門委員会 |
現在,わが国においては良質の河川産骨材の枯渇とともに,資源的および地域的制約により,コンクリート用骨材はきわめて多様化してきている.すなわち,細骨材では川砂・陸砂・海砂・砕砂がほぼ等量,粗骨材では砕石がほぼ半量で残りを川砂利・陸砂利・山砂利その他が占めているのが全国的な概況である.このような状況の下では良質骨材の入手が必ずしも容易でなく,その結果として,骨材の品質管理がますます重要となり,骨材品質とそれを用いたコンクリートの強度,変形,耐久性などとの関係について,さらに科学的な検討を加えることが必要となる.骨材資源は今後さらに多様化が進行し,いわゆるゼロエミッション達成に向けてコンクリート廃材から得られる再生骨材ならびにスラグ・フライアッシュに代表される産業副産物を利用した新しい骨材の有効利用を図っていくことも重要であることは言うまでもないが,このような骨材の開発のためには,目標とする骨材品質に対して明確な指標を与えることが,コンクリート工学に課せられた重要な課題であると考えられる.
本委員会は昭和39年人工軽量骨材委員会として設立以来,社会的なニーズの方向を反映させて運営されてきた.設立初期より昭和40年代は,各種の人工軽量骨材の利用についての研究が最重要課題として取り組まれ,「施工指針」や「配合設計指針」を発表するなど,その普及に指導的役割を果たした.昭和50年代に入ってからは,研究対象が多角化し,砕砂,スラグ骨材などの新しい骨材の問題点,海砂の適正使用などを取り上げるとともにコンクリート物性の改善法やコンクリートの耐久性能なども研究テーマに組込む方向で運営されている.最近取り上げられているテーマとしては,表面形状を改良した砕石,砕砂の有効利用,高炉スラグやフライアッシュの骨材原料への利用,超軽量骨材の利用によるコンクリートの軽量化,再生骨材の有効利用,外国産骨材の利用に関する諸問題,低品質骨材を使用する際の配合設計や構造設計面における問題点,RCDやRCCP用コンクリート骨材,骨材の品質試験法の改良,反応性骨材の調査試験法や実用骨材の実態調査さらにエココンクリートなども挙げられる.一方,今後の課題としては,より広い視野に立った新しい骨材の開発,未利用資源の有効利用,各種骨材を用いたコンクリートの最適製造法など,骨材の開発,品質改良に直接関連した問題の他に,繊維補強など新しい複合法によるコンクリートの物性改善や連続繊維補強材(FRP)のコンクリート構造への適用,高温・低温環境,海洋環境など過酷環境下のコンクリートの挙動,これらに適した構造設計法の開発など研究対象を拡大しようと意図している.このような方向性を明確にするために会の名称を平成10年度に「コンクリート用骨材部門委員会」と改めた.
平成21年度からは,日本コンクリート工学会等の他学会との連携活動を強化し,特にコンクリートの乾燥収縮と骨材との関係を問題として取上げ,地産池消を原則とするコンクリート用骨材の合理的使用法に焦点をあてた調査研究活動を実施してきた.平成26年には委員会設立50年を迎え,さらに活動を活性化させている.2020年度には以下のように,コンクリート用混和材料部門委員会と合同で部門委員会(公開)を実施した.(以下,敬称略)
■ 2020年度第1回コンクリート用骨材・混和材料合同部門委員会(公開)
日 時:2020年12月3日(木)13時〜17時
場 所:オンライン開催
出席者:37名
講演(1)
大阪産業大学 山田 宏
「粗骨材の長さ変化に関する検討」
講演(2)
東京大学大学院 野口貴文
「シラスのコンクリート用材料としての全量活用−火山ガラス微粉末の規格化−」
講演(3)
東京理科大学 今本啓一
「スラグ系細骨材を使用したコンクリートの実大壁による収縮ひび割れ抑制効果」
骨材と混和材料はともにコンクリートに必要不可欠な材料であり,昨年度に引き続き,コンクリート用混和材料部門委員会との合同部門委員会を12月に企画した.この第1回合同部門委員会では,骨材関係として粗骨材単体の長さ変化およびスラグ系骨材をテーマに,また混和材料ではシラスのコンクリート材料への適用について活発な意見交換が行われた.新型コロナウイルスの影響で今回はオンラインでの1回のみの開催となった. 本委員会の特色は,本学会の性格を反映して,その構成メンバーが多彩である点にもある.すなわち,いわゆる土木・建築という縦割りはまったく意識されない運営であり,骨材メーカー,セメント・コンクリート技術者,設計技術者,施工技術者など多方面の関係者が委員として参加している.また,委員会開催に際して,委員以外からも広く適任者をスピーカーに選んで話題提供していただいている.ご関心のある各位の積極的なご参加を希望する次第である.なお,2020年度の部門委員会の運営体制は以下のとおりである.
委員長:熊野 知司(摂南大学)
幹 事:浅野 文男(住友大阪セメント梶j
高井伸一郎(村本建設梶j
高谷 哲(京都大学)
高見 新一(大阪産業大学)
武田 字浦(明石工業高等専門学校)
水越 睦視(神戸市立工業高等専門学校)
高田 良章(潟tローリック)
山ア 順二(粥ヌ沼組)
山田 宏(大阪産業大学)
極限環境部門委員会 |
2005年度より名称を高圧力部門委員会から「極限環境部門委員会」に改称した.最近は超高真空,超高圧力などの広い圧力範囲を視野に入れた材料開発が盛んになってきており,圧力をパラメータとする科学と技術を包括し,当該分野の研究者・技術者が参加しやすい部門名とすること,および,圧力パラメータのみならず,超高温,極低温,非平衡過程も含めた極限環境下における物質挙動と材料開発に関心のある多数の研究者・技術者が参加しやすい部門名とすることを目的とした.広く会員を募り,現在個人会員14名,法人会員1社の会員数である本部会をさらに魅力的なものに発展させることを目指して活動を続けてきた.以下に,(旧)高圧力部門委員会を含め,部門委員会の活動を報告する.
公開シンポジウム
1973年に「高圧力下における高分子材料」という主題で最初のシンポジウムが開催されて以来,1983年からは公開シンポジウムとして継続して開催されている.これまでの公開シンポジウムの主題は次の通りである.
第1回(1983年)「高圧流体,基礎と応用」
第2回(1985年)「材料の高圧合成」
第3回(1987年)「高圧固体物性」
第4回(1989年)「高圧力技術と固体合成・物性」
第5回(1991年)「高圧流体物性の新展開」
第6回(1993年)「等方圧加工プロセスによる材料開発」
第7回(1995年)「水および水溶液の機能開発と利用技術」
第8回(1997年)「固体の高圧物性,反応,実験技術」
第9回(1999年)「高圧流体の物性測定最前線」
第10回(2000年)「高圧力と塑性加工」
第11回(2002年)「高圧の可能性に挑む」
なお,第10回のシンポジウムは高圧力部門委員会と塑性加工部門委員会と共同で開催し,他部門との横断的学術交流も積極的に行ってきた.
1) 第53期学術講演会(2004年)
「圧力効果−その理論と応用」(フォーラム)
2) 第54期学術講演会(2005年)
「極限環境下の材料挙動」(フォーラム)
3) 第55期学術講演会(2006年)
「極限環境下の溶液物性と反応」(フォーラム)
4) 第56期学術講演会(2007年)
「極限を利用した材料の創成と物性」(フォーラム)
5) 第57期学術講演会(2008年)
「極限環境における生物・化学の最前線」(フォーラム)
6) 第58期学術講演会(2009年)
「極限環境を利用した材料科学の最前線」(フォーラム)
7) 第59期学術講演会(2010年)
「極限環境下における溶液科学の展望」(フォーラム)
8) 第60期学術講演会(2011年)
「極限環境下での固体材料の合成と物性評価」(フォーラム)
9) 第61期学術講演会(2012年)
「各種極限環境下での新物質の創製と物性評価」(フォーラム)
10)第62期学術講演会(2013年)
「高温高圧技術の材料科学的展開」(フォーラム)
11)第63期学術講演会(2014年)
「極限環境下の分子科学」(フォーラム)
12)第64期学術講演会(2015年)
「極限環境下における固体・材料科学の展望」(フォーラム)
13)第65期学術講演会(2016年)
「極限環境下の材料化学の最新動向」(フォーラム)
14)第66期学術講演会(2017年)
「極限環境下の材料化学・分子科学の最前線」(フォーラム)
15)第67期学術講演会(2018年)
「極限環境の材料化学・分子科学の最前線」(フォーラム)
16)第67期学術講演会(2019年)
「極限環境の材料化学・分子科学の最前線」(フォーラム)
17)第68期学術講演会(2020年)
「極限環境の材料化学・分子科学の最前線」(フォーラム)
1) 第41回(講演会,日本材料学会本部,2019年1月)
イオン液体―水混合溶液中で生じる蛋白質の不思議な挙動(防衛大学校・竹清貴浩)
2) 第42回(第67期学術講演会・フォーラム,室蘭工業大学,2019年5月)
高圧力技術を用いた新物質探索(室蘭工業大学・関根ちひろ)
高強度銅の圧力容器への適用(室蘭工業大学・安藤 哲也)
フラーレン-アルカン溶媒化合物の結晶構造(三重大学・高橋裕)
3) 第43回(講演会,三重大学工学部,2019年9月)
高圧ガス中レーザー蒸発法による酸化ケイ素ナノ構造の形成(三重大学・小海文夫)
多様な合成反応環境下における窒化ケイ素の形態変化(三重大学・馬場創太郎)
4) 第44回(講演会,日本材料学会本部,2020年1月)
最近のHIP,CIP技術(神戸製鋼所・真鍋康夫)
5) 第45回(講演会,日本材料学会本部,2021年12月)
極限環境と無機材料研究・開発(同志社大学・廣田健)
このように,本委員会では,これまで高圧力の静的・動的発生,圧力測定,高圧装置,高圧下の固体・流体物性と反応,高圧加工技術など,圧力をパラメータとする極限環境を利用する材料科学,工学,理学のすべての学術分野や技術開発に多大なる貢献をしてきた.しかし,昨年来のコロナ禍により委員会活動が大きく制限される状況となっている.また,近年の会員数減少により活動の継続が困難になりつつある.そのため,2021年度より当面の間,本会を休会とすることになった.
複合材料部門委員会 |
委員会の沿革と活動の概要
本委員会では,材料および構造の複合化・機能化・知能化に関連する分野について,学術的発展および技術的発展に寄与することを目的として,様々なかたちの情報交流や調査研究などを行っている.本委員会は1965年7月に「強化プラスチックス部門委員会」として設立された国内で最初の複合材料に関する学術組織であり,我が国における複合材料研究の発展に先駆的な役割を果たしてきたと認識している.その後,1997年12月に現在の名称に改称し,高分子系複合材料にとどまらず,複合化・機能化・知能化をキーワードとした広範な分野に活動範囲を広げている.近年においては,機体重量の約50%を複合材料化された中型旅客機B787にも象徴されるように,航空宇宙分野においては,複合材料は最も重要な位置を占める材料となっている.また,自動車用途の分野や鉄道分野においても,複合材料の普及は加速的に進んでおり,各国がその研究開発にしのぎを削っている.このような中,本委員会が果たすべき役割は,これまで以上に大きなものとなっており,スマートコンポジット,グリーンコンポジット,ナノコンポジットなど,先駆的分野に関する情報交流にも注力している.
委員会の主な活動
1)定例委員会
定例委員会では,複合材料に関する先端的なトピックスについて,講演会形式で毎回数件程度の話題について情報交換・意見交換を行っている.また,講演会とあわせて見学会や懇親会なども企画し,より有機的な研究交流を図っている.その他,関連する他学協会や他部門委員会との連携にも努めている.
2020年度は新型コロナウイルスの影響より当初の活動計画の変更を余儀なくされたが,オンラインでの開催方式を導入し,以下4回の定例委員会を開催した.
■第267回定例委員会
日 時:2020年7月13日(月)
場 所:大阪大学及びオンライン会議のハイブリッド開催
出席者:20名
内 容:幹事会ならびにビジネスミーティング
■第268回定例委員会
日 時:2020年10月1日(木)
場 所:Zoomによるオンライン開催
出席者:11名
内 容:幹事会,ビジネスミーティング,部門委員会部門賞 受賞記念講演4件
■第269回定例委員会
日 時:2020年12月7日(月),8日(火)
場 所:Zoomによるオンライン開催
内 容:幹事会,ビジネスミーティング,JCOM若手ウェビナー講演6件(兼 第1部基礎セミナー)
出席者:84名
2020年度JCOM若手ウェビナー 基礎セミナー:
■第270回定例委員会
日 時:2021年3月3日(水)
場 所:Zoomによるオンライン開催
内 容:幹事会,ビジネスミーティング,JCCM-12特別講演
出席者:20名
2)日本複合材料会議
日本複合材料会議(JCCM,Japan Conference on Composite Materials)は,本委員会が主催する最大の行事であり,日本複合材料学会との共催により,第12回を迎えるに至った.その前身は,1972年にスタートした「FRPシンポジウム」であり,2007年により幅広い分野への展開を目的に「JCOMシンポジウム」に発展した.さらに,2010年より日本複合材料学会との共催により,「日本複合材料合同会議」に発展した.2014年には「合同」の文字をなくし,名実ともに,日本を代表する複合材料分野の会議となった.
2020年度はJCCM-12として,新型コロナウイルスの感染予防の観点から,2021年3月2日〜3月4日にかけてオンライン開催された.
3)JCOM若手ウェビナー
当部門委員会では複合材料分野の次代の研究を担う若手技術者・研究者の交流を支援するためJCOM若手シンポジウムを2010年にスタートした.2020年度は,新型コロナウイルス感染症の影響による大きな社会変動のうねりの中で,複合材料分野の若手技術者・研究者の支援に関してもデジタルシフトによる新たな様式での交流促進や,それによりこれまでに気付かなかった新たな価値や連携の創成等が期待されることから,JCOM若手ウェビナーとしてZoomによるオンライン開催とした.プログラムは3部構成であり,第1部として複合材料分野の基礎セミナー,第2部として若手研究者・技術者からの講演発表セッション,第3部としてオンライン意見交流会を行い,若手研究者間のネットワーク構築と横断的活動に繋がる機会を設けた.
また,第2部の発表者の中から優秀発表賞を下記5名に贈賞した.
4)部門賞
複合材料部門賞論文賞,功績賞,奨励賞,技術賞を設け,複合材料分野で活躍する研究者,技術者,団体に対して,毎年数件程度の授賞を行っている.授賞の対象を本部門委員会委員に限定せず(功績賞を除く),広く複合材料分野の学術および技術の活性化に繋がるよう制度設計している.2019年度の受賞者は下記の通りであり,第268回定例委員会において受賞記念講演ならびに表彰を行った.
5)研究ワ一キング・グループ(WG)活動
複合材料に関連する特定のテーマについて,ワーキング・グループを設置し,密度の濃い情報交換を促進している.昨年度については,「グリーンコンポWG」,「量産車用コンポジットの開発WG」が活動を行っている.
6)国際学術交流
国内だけでなく海外の研究者や技術者との交流を図るべく,海外研究機関の視察や共同講演会を行っている.
本委員会への加入方法
本委員会への入会は,下記URLを参照されたい.
本委員会ホームページ:https://compo.jsms.jp/
コンクリート用混和材料部門委員会 |
本委員会は,1965年7月にAE剤および減水剤の基準と試験法を確立し,フレッシュコンクリートおよび硬化コンクリー トの品質向上に寄与することを目的に発足し,今年で55年目に入る.1999年度に化学混和剤小委員会と混和材小委員会の二つの小委員会を設け,コンクリートの構造用材料としての将来像を展望しつつ,コンクリート用混和材料の品質,それらを用いたコンクリート品質,施工規準,適用方法,配合に用いる化学混和剤基準(調合)設計法などを取り上げて,より実用的な動きになることを図った.2004年4月にA4版475頁からなる「日本材料学会編・コンクリート混和材料ハ ンドブック・児島孝之(立命館大学)監修」を刊行した.本書籍は1972年刊行の「コンクリート用化学混和剤」の大幅な改訂版であり,これまでの混和剤に加えて混和材の項が新たに設定されている.
京都大学 河野委員長,立命館大学 岡本幹事長の体制から2014年度より関西大学 鶴田委員長,近畿大学 麓幹事長の体制に変更して活動を行っている.本委員会は,発足以来これまでに,93回の委員会を開催してきており,コンクリート用混和材料に関する種々の話題提供やシンポジウム,混和材料に関わる建設現場や工場等の見学会を行って,最新の情報を得る機会を提供してきた.今後も様々な活動を通して,コンクリート用混和材料の発展や研究者・技術者の研究・技術レベルの向上のために貢献していくつもりである.コンクリート用混和材料に関連する事項に関心をお持ちの方,話題をお持ちの方には,是非とも参加いただきたいと考えている.2020年度は,コロナ禍の影響もあり,下記のように1回の委員会と3回の合同幹事会を開催した.
■2020年度第1回コンクリート用混和材料・骨材部門合同委員会(第94回コンクリート用混和材料部門委員会)
内 容:
13:00〜13:10 開会挨拶
コンクリート用混和材料部門委員会委員長 鶴田浩章
13:10〜14:10 講演1
山田 宏氏(大阪産業大学・准教授)
「粗骨材の長さ変化に関する検討」
14:25〜15:25 講演2
野口 貴文氏(東京大学大学院・教授)
「シラスのコンクリート用材料としての全量活用ー火山ガラス微粉末の規格化ー」
15:40〜16:40
今本 啓一氏(東京理科大学・教授)
「スラグ系細骨材を使用したコンクリートの実大壁による収縮ひび割れ抑制効果」
16:40〜17:00 講評・閉会の挨拶
コンクリート用骨材部門委員会幹事 水越睦視
報 告
講演3件とそれらに関する議論を行った.骨材関係では,粗骨材単体の長さ変化及びスラグ系骨材を使用した実大壁の収縮ひび割れに関する話題の提供をしていただき,参加者から多くの質問が出され議論が行われた.混和材料関係では,規格化された火山ガラス微粉末に関する最新の話題が提供され,こちらにも参加者からの多くの質問が出され議論が行われた.コロナ禍のため,部門委員会後に意見交換会ができずに参加者間の交流を深めたり,講師の方にさらなる質問をすることができず,とても残念であったが,部門委員会中の質問の状況から参加者の皆様には関心の高いテーマであったと感じられた.
■合同幹事会(骨材部門委員会と混和材料部門委員会の合同)
第1回;2020年9月29日(火)Zoomによるオンライン会議
第2回;2021年2月19日(金)Zoomによるオンライン会議
第3回;2021年3月26日(金)Zoomによるオンライン会議
■2021年度の活動
本部門委員会では,2021年度の活動として3回の委員会と数回の幹事会の開催を予定している.各混和材料メーカーを含めた委員からなる幹事団により,計画的な委員会活動や企画の検討を推進していき,部門委員会のホームページを活用した活動を推進していく予定である.特に,委員会においては若い委員が少なくなっているため,若手の研究者および技術者へのアピールを積極的に行い,若手の方に多く加わっていただき,活動を活性化していくことにも注力していきたい.加えて,混和材料に関する検討WG(仮称)を組織して,テーマを絞った活動をおこなうことも望まれており,実現に向けた検討を進める予定である.さらに,コンクリート用骨材部門委員会との合同企画も積極的に行うことが望まれており,2021年度も3回の委員会のうち1回を合同開催として連携活動も積極的に行っていく予定である.
フラクトグラフィ部門委員会 |
フラクトグラフィは,破壊過程の最も如実な観察が可能であり,ますます浸透,活用されつつある.特に,近年の観察・分析機器および数値計算処理技術の進歩とともに,フラクトグラフィは飛躍的な発展を遂げ,破壊事故解析においては事故原因の重要な証拠を提供し,また,破壊の研究に際して,ミクロとマクロの谷間を埋めるべく,破壊力学の今後の展開の最重要情報提供源の一つとして重視されている.
本委員会は,フラクトグラフィを主要な手段とする破壊の研究ならびに,破壊事故解析技術のより一層の発展を推進することを目的としている.歴史的には,フラクトグラフィ研究会,フラクトグラフィ研究委員会,日本機械学会フラクトグラフィ分科会を経て,本委員会に引き継がれた.得られた成果は,フラクトグラフィシンポジウムや会誌「材料」の論文等として公表されている.しかしながら,近年はフラクトグラフィに携わってきた技術者,研究者の世代交代により技術の伝承が問題化しつつある.これらの背景から,破面のデータベース化,機械学習による破面の自動判別などの新しい試みに取り組んでいる.
本委員会では毎年2回の定例委員会の他,フラクトグラフィシンポジウムとフラクトグラフィ講習会を交互に隔年で開催している.令和2年度の開催内容は以下の通りである.
【第121回部門委員会】
2021年3月4日(木)
Zoom(出席者:11名)
講演通番および講演内容:
553.「日本ばね学会における「ばね等の破面解析研究委員会」の活動紹介」
労働安全衛生総合研究所 山際謙太
【第16回フラクトグラフィシンポジウム】
令和2年10月15日(木)
第6回材料WEEK期間中にZoom及びYouTube Liveで開催 参加者18名
講演番号1 平井隆嗣,関西大学理工学研究科,鋼桁に接着補強した CFRP 板の剥離挙動
講演番号2 濱田真行,大阪産業技術研究所,破断面二値画像からの直線抽出による破壊起点の推定
講演番号3 関康平,埼玉大学,Type-3 FW CFRP 複合圧力容器の圧力サイクル下の疲労き裂進展とフラクトグラフィ
講演番号4 久森紀之,上智大学,電子ビーム積層造形法によるチタン合金の微細構造と疲労特性の関係
講演番号5 中谷正憲,神戸工業試験場,積層造形金属材料の疲労強度と実用化に向けた課題
なお,本年度(2021年度)は,第7回材料WEEK期間中に,京都テルサにおいて,第8回フラクトグラフィ講習会を開催する.
フラクトグラフィは,金属材料だけに限らず各種の材料に適用することができ,材料が壊れた原因の解明のために威力を発揮する.しかしながら,破面を観察して解析するためには,相応の経験が必要である.そのために,疲労部門委員会との共同によりフラクトグラフィデータベース小委員会を立ち上げ,破面観察の経験積み上げの助けとなるよう,2016年から2年間にわたり,フラクトグラフィに関するデータベース構築を目的とした活動を行ってきた.
このように本部門委員会では,フラクトグラフィに関わる議論および情報交換の場を提供している.会員の皆様には是非,本部門委員会への加入をお願いするとともに,周辺の研究室のメンバーや職場のエンジニアに,積極的な参加を呼びかけていただけると幸いである.
信頼性工学部門委員会 |
信頼性工学は,当初エレクトロニクス分野で産声をあげ,軍事関係の機器やシステムの信頼性向上,土木・建築構造物の信頼性確保などの分野で長足の進歩を遂げている.その後,機械構造物の安全性・信頼性確保の観点から機械工学,材料関連分野にも応用され,特に材料関連部門では疲労寿命・強度の確率モデルなど幅広い分野で研究されるようになり,航空機・原子力機器・橋梁など各種の構造システムの安全性と信頼性評価に貢献するようになる.しかしながら,その歴史はそれほど長くない.
一方,近年は,各種工業製品や土木建築構造物において多様化・高度化・知能化が複合的かつ重層的に進んでいる.こうした状況では,製品や構造物がシステムとして複雑化することが避けられず,一部に損傷や破壊が発生したとしても,その被害が従来以上に拡大される.そこで,損傷箇所を早期に発見し被害を最小限にとどめ,人間の生命や社会の安全を保証するための基盤技術の確立が強く望まれている.信頼性工学部門委員会は,こうした広い観点から「材料」を介して種々の工学分野を横断的に結び付けながら,我国において信頼性工学を確立・普及させることを目的に設立された.この目的を達成するために,本学会の他の部門委員会は言うに及ばず他の学会とも連携して幅広い委員会活動を展開している.
令和2年度の信頼性工学部門委員会活動としては,新型コロナウイルスの影響により委員各位の移動が制限される中ではあるが,委員会活動が滞らないよう年3回の定例委員会を下記のスケジュールおよび内容にて開催した.
第154回 令和2年4月:
ビジネスミーティング(メール審議)
第155回 令和2年9月18日(金):
オンライン開催
第156回 令和2年12月4日(金):
ビジネスミーティング(オンライン開催)
さらに,年1回の幹事会(令和2年8月21日(金))をオンラインにて開催して次年度の活動計画を討議した.
令和2年12月5日(土)には,第32回信頼性シンポジウムをオンラインにて開催した.このシンポジウムでは,昭和52年以来,「安全性・信頼性」を共通のバックボーンとして種々の分野の研究者・技術者が一堂に会して研究成果を発表している.東京大学教授 吉川暢宏氏の特別講演“炭素繊維強化プラスチック製品の強度は樹脂が支配する”に加えて26件の研究成果が発表され,活発な討論や情報交換が行われた.また,今回のシンポジウムでは中止としたが,平成17年からは,International Workshopを併設し,毎回広く国際的な視野から当該分野の最新情報を提供している.
セミナーの企画事業としては,平成26年度に「初心者にもわかる信頼性工学入門セミナー」を新たに企画し,毎年12月に開催している.残念ながら今年度は中止としたが,来年度は第7回目となるセミナーを開催し,今後の部門委員会委員の増加につなげていく予定である.
令和3年度の計画としては,年3回の定例委員会(4月:オンライン,9月:関西,12月:富山)と年1回の幹事会の開催を計画している.また,令和3年5月28日から30日の期間に開催予定の第70期通常総会・学術講演会ならびに各種併設行事において,オーガナイズド・セッション「材料・機械・構造物への信頼性工学の応用展開」と信頼性フォーラム「最新情報処理技術を駆使した新しい信頼性・安全性」を企画している.さらに,同年12月には富山にて第33回信頼性シンポジウムを開催する予定となっている.
次に,疲労部門委員会と本部門委員会の合同企画として日本材料学会標準(JSMS-SD-6-04)金属材料疲労信頼性評価標準【S-N 曲線回帰法】改訂版を発行し,その英文版も出版している.また,本組織を改組して新しい金属材料疲労信頼性データ集積評価委員会の活動において,新たに金属材料疲労強度データの収集とデータベースの構築と運用が始まっている.さらに,本委員会では,材料学会および本部門委員会の活動の活性化にむけて平成27年度より「材料強度信頼性分科会」と「防災危機管理研究分科会」,令和元年度より「確率過程応用研究分科会」を発足させ,部門委員会活動の新たな展開を企画している.
信頼性工学部門委員会では,信頼性工学が今後ますます有用な学問として成長し,社会に広く普及・浸透することを目指している.そのためには,人間の安全で快適な生活を保証し社会の持続的発展を可能にする基盤技術として社会に定着させる必要がある.しかし,信頼性工学の守備範囲は極めて広く,広範な分野における産・官・学の一層の連携が重要である.この観点から,種々の立場から本委員会への参加を期待している.参加については,主として本委員会委員の推薦によるが,参加希望の方は日本材料学会宛に直接申し込んで頂くと,幹事会審議を経て本委員会の承認を得た上で委員に委嘱される.ただし,企業会員として参加される場合は,委員会資料費として年間15,000円を納付して頂き,その他の個人会員の参加者については,1,000円の年会費を徴収させて頂くことになっている.信頼性工学部門委員会では,皆様と一緒に信頼性工学の発展に寄与したいと願っている.委員会へのご参加をお願いしたい.
破壊力学部門委員会 |
本委員会は,破壊力学という特徴ある力学体系と,それに基づくき裂材の強度評価体系を中心に,広く材料の破壊現象ならびにそれに関連した諸問題を取り扱う委員会としてスタートした.最近は,それに派生した接着端,接触端等の応力特異場問題にも展開している.破壊現象を取り扱うという点では,疲労,高温強度,腐食防食などの諸部門委員会と,また,強度問題一般という点では,マルチスケール材料力学,信頼性工学など諸部門委員会とも共通する部分をもっている.本部門委員会が昭和54年に発足して以来,すでに41年を経た.この間,産・官・学の各委員に興味をもたれている先端技術や新素材などの先端情報の紹介や解説を行い,講演会や討論を通じて委員相互の情報交換を行うため,年3回または4回の委員会と2年に1回のシンポジウムを開催してきた.また,本委員会は,幹事会で立案した各種議案や会の運営に関わる基本的諸問題を審議・決定する機関として機能している.2020度は,すでに以下に示す2回の委員会を実施し,3月にも開催を予定している.
第169回 2020年9月30日,オンライン
主題「複合材料の破壊」
第170回 2020年12月18日,オンライン
主題「破壊力学の新展望」
第171回 2021年3月(開催予定)
これらの講演会資料は,小冊子にまとめ,各委員に配布している.
また本委員会では,破壊力学シンポジウムを隔年開催しており,第20回破壊力学シンポジウムは2021年11月頃に開催を予定している.
本委員会では,Ohji-Ohtsuka-Okamura Award(功績賞,奨励賞)を設けており,破壊力学シンポジウムにおいて贈賞している.また, 破壊力学シンポジウムでは,30歳未満(開催日時点)の登壇者を対象とした「ベストプレゼンテーション賞」も設けている.
本委員会では小委員会を設け,以下のようなテーマを絞った活動も行っている. FMニュース小委員会では,破壊力学に関連する国際会議や規格の制定・改正などの破壊力学関連のニュースを集録編集し,「FMニュース」として委員会およびシンポジウムの開催ごとに配布している.
K値小委員会では,これまでの活動によって,応力拡大係数に関するハンドブックとして,STRESS INTENSITY FACTORS HANDBOOK, Vol.1-5を発行してきた.このハンドブックは,国内に限らず国外でも広く活用されており,国外を含め研究者からの精度などに関する問合せに対して,委員会として対応している.また,Vol. 1, 2については,収録内容をpdf化し検索機能も備えた電子版ハンドブックを平成25年度に出版し,好評を得ている.
界面強度評価小委員会は平成18年度より設置され,界面強度評価(接合強度評価および皮膜はく離強度評価)に必要な試験法の具体例を収録するとともに,K値小委員会の成果を活用した新たな評価法の提案に取り組んできた.また,これらの成果をまとめた「界面強度評価ハンドブック」を平成22年度に出版し,好評発売中である.
また,平成25年度には,非破壊検査と破壊力学のさらなる連携と分野横断的な研究開発の推進を目指し,新たに非破壊検査小委員会を立ち上げた.関連のある部門委員会や他学協会等にも呼びかけ,これまでに6回の小委員会を公開で開催した.
さらに2019年度には,若手育成と破壊力学のさらなる普及,社会貢献を目的とし,講習会小委員会を立ち上げ,2021年3月23日には第一回講習会を実施する予定である.
本部門委員会は,会社委員(企業・法人所属委員)47名,個人委員(大学・公的研究機関所属委員)93名,および名誉委員5名,計145名で構成されている.破壊力学を実機構造物などの設計・保守点検などの現場の問題に活用することは,産業基盤技術を確立するうえでも重要なため,企業関係の方々の本部門委員会への参加を強く望んでいる.なお,会社委員の場合は,原則として日本材料学会の賛助会員になっていただいたうえで,年間20,000円の部門委員会費を,個人委員には年間2,000円の部門委員会費を負担いただいている.会社委員は,代表者以外に4名まで部門委員会のメンバーとして登録でき,登録されたメンバーは委員会へ自由に参加できる.
このように,本部門委員会は破壊力学およびその関連分野において活発に活動しており,関連する技術者,研究者の方々の積極的な参加をお待ちしている.部門委員会のホームページのURLはhttps://fm.jsms.jp/index.htmlであり,行事予定や委員会活動を随時更新して広報している.
セラミック材料部門委員会 |
本委員会は,昭和54年6月に,セラミック材料の諸問題を扱う委員会として発足し現在に至っている.セラミックスの合成,製造,加工などの各種プロセス技術ならびに機械的,熱的,電子・磁気・光学的,化学的性質などの設計と評価技術に関する諸問題を対象に,産・官・学の研究者の情報交換・討論の場として,有用な機会を提供してきている. 本委員会の構成員には法人委員と個人委員がある.委員会への加入は,主として現委員の推薦によることが多いが,日本材料学会事務局に,加入希望する旨を直接申し出ていただいてもよい.幹事会と委員会の了承を得て,委員となって頂くことになる.なお,会の運営維持のため,法人会員には年間15,000円を,委員会での講演会や見学会の資料代等(各回参加費は無料)として,また個人会員には,委員会への出席各回毎に1,000円の費用負担をお願いしている.
2020年度はコロナ感染拡大に活動が制限されたが,例年7月に開催している学術講演会を1月にオンラインで開催した.委員会活動はこの1回のみとなったが,一刻も早くコロナ感染が終息し通常の委員会活動ができることを心待ちにしている.
最後に開催した委員会,オーガナイズドセッション等の内容を以下に示す.
第156回委員会(学術講演会)
2021年1月29日(金)
場 所:オンライン
テーマ「セラミックスの合成と評価」
「材料シンポジウム」ワークショップ 最前線のナノ/セラミック材料
2020年10月14日(水)
場 所:京都テルサ
衝撃部門委員会 |
委員会の沿革
本委員会は,材料や構造の衝撃問題に関する研究・調査を通じて,材料科学の発展および関連技術の向上に寄与することを目的として,1981年(昭和56年)2月に設立された.本委員会では,材料や構造の衝撃問題に関する研究調査・情報交流・資料収集,表彰などの活動を行うほか,これに関連する研究講演会・討論会・講習会・シンポジウムなどの事業を行っている.本委員会で対象とする衝撃問題の範囲は,衝撃荷重下における材料や構造の高速変形・破壊進行,それらを対象とした計測技術・評価技術・数値解析技術,衝撃荷重を利用した生産技術・加工技術など,多岐にわたり,機械工学,土木工学,有機・無機化学,航空・宇宙工学など,多様な分野の研究者・技術者が本委員会に所属している.このような学際的特徴を活かし,近年は,異分野融合による新規研究課題の創出や衝撃関連技術の啓蒙にも注力している.
主要な活動
定例部門委員会(研究会・見学会)
研究調査・情報交流の場として,年4回程度の研究会・見学会を開催している.研究会では,衝撃問題に関する最新のトピックを中心に,記念講演や若手講演など,様々な切り口で情報交流を行っている.
学術講演会併設行事
通常総会・学術講演会の併設行事として,材料・構造の衝撃問題に関するオーガナイズドセッションを企画し,衝撃問題に関する研究交流を行っている.また,これに合わせて,公開部門委員会を企画し,衝撃問題に関する啓蒙活動を行っている.
国内シンポジウム
1983年(昭和58年)から概ね3年ごとに,「材料の衝撃問題シンポジウム」を開催してきた.このシンポジウムは,国内唯一の衝撃問題を主題とするシンポジウムであり,昨年度は第13回を材料WEEK併設行事として開催した.
国際シンポジウム
1992年(平成4年)から概ね3年ごとに,「International Symposium on Impact Engineering (ISIE)」を支援してきた.前回(ISIE2019)はオーストリアで開催され,次回(ISIE2023)はオーストラリアで開催されることになっている.
連載講座・特集号等
委員会活動の一環として,会誌「材料」における連載講座や特集号への寄稿や書籍の発行などを行っている.今年度は,連載講座「衝撃工学の基礎と応用」(Vol. 70, No. 5〜9),衝撃特集号(Vol. 70,No. 11)が予定されている.
表彰制度
衝撃工学分野の研究・開発の発展を図るため,日本材料学会衝撃部門賞を設け,功績の内容により,功労賞,業績賞,奨励賞の授賞を行っている.昨年度は,小林秀敏氏(大阪大学),田邊裕治氏(新潟大学),川合伸明氏(熊本大学)が各賞を受賞した.
技術講習会
委員会活動の成果還元と社会貢献を目的として,初心者向けの技術講習会「衝撃工学フォーラム(初心者のための衝撃工学入門)」を開催してきた.この企画については,現在,休止中であるが,COVID-19問題の終息後の再開を検討している.
その他
衝撃関連の問題については,産業界からの問い合わせも多く,委員会ホームページに技術相談窓口を設け,随時,対応を行っている. https://impactmb.jsms.jp/soudan.html
2020年度の委員会
第159回衝撃部門委員会(COVID-19の影響により中止)
開催期日:2020年5月29日(金)
開催場所:電気通信大学
講演1:「爆発威力の抑制を目指した水緩衝材の性能評価」
産業技術総合研究所 丹波 高裕 氏
講演2:「発破のための岩盤評価法と画像相関法(DIC)を用いた動的歪み計測」
産業総合技術研究所 高橋 良尭 氏
講演3:「鹿島マイクロブラスティング工法・瞬間破砕型杭頭処理工法の開発と現場施工事例の紹介」
鹿島建設技術研究所 中村 隆寛 氏
第160回衝撃部門委員会
開催期日:2020年10月13日(火),14日(水) 開催場所:Zoomによるオンライン開催
講演1:「衝撃解析とお世話になった方々」
CAEソリューションズ 今木 敏雄 氏
講演2:「衝撃荷重を受けるコンクリート構造物の安全性に関する研究とそこから派生した新たな研究テーマ」
防衛大学校 藤掛 一典 氏
第161回衝撃部門委員会
開催期日:2021年3月31日(水)
開催場所:Zoomによるオンライン開催
講演1:「40年間の衝撃研究を振り返って」
大阪大学 小林 秀敏 氏
講演2:「整形外科バイオメカニクスにおける衝撃問題〜医工連携研究の30年を振り返って〜」
新潟大学 田邊 裕治 氏
講演3:「私の研究のこれまでとこれから(弾性波解析から動的破壊力学へ)」
京都大学 石井 陽介 氏
講演4:「衝撃波を利用した固体物性研究」
熊本大学 川合 伸明 氏
その他
昨年度については,COVID-19の影響により,定例委員会などの事業の実施に大きな影響が出た.今年度については,オンラインでの開催のみならず,対面での開催を再開させるべく検討を進めている.本委員会に関心をお持ちいただける場合には,日本材料学会もしくは本委員会のホームページをご参照ください.
日本材料学会:https://www.jsms.jp/
衝撃部門委員会:https://impactmb.jsms.jp/
強度設計・安全性評価部門委員会 |
本部門委員会は,機械や構造物に関する強度と安全の問題を議論する場として活動してきた. 昨今の様々な機械・構造物に関連する出来事を見るまでもなく,設計者と製造者のみならず,その管理者においても強度と安全性に対する認識の不足,あるいは欠如が大事故につながり,尊い人命が失われ,製造企業ならびに社会全体が甚大な損失を蒙ることとなる.今日のように複雑化した社会システムにおいて,関係者はこのことを益々強く認識しておかなければならないと考えている.また,設計者や製造者は損傷事例を経験しその対策に従事することがあるが,過去の事例が公表されておらず,判断材料が不十分であることも多い.
機械や構造物の経年変化による材料劣化や予想外の外力,あるいは結果的に人為的な間違い等が原因で損傷や事故が発生している.特に強度設計とその評価は経験的なことがらも含むことから,学理と経験を総合的に議論することは重要である.また,そのような経験は,たとえ体系的に取りまとめられていなくても,多くの技術者にとって非常に参考になる.
本部門委員会では,材料強度,振動・応力解析,実機の強度評価,事例解析などに関する話題を取り上げて議論している.また,関連する要素技術に関しても実機の視点に立って考究し,研究の深化に役立つことを意識して取り上げ,またその研究成果の報告としてのシンポジウムを開催している.
第68回委員会以降は,特定の機械・構造部品や特定の事象を取り上げてシリーズ化した数回の講演と討議を行うことによって技術伝承を図る試みも行っている.これまでにボルトの締結と強度に関して3回,転がり疲れと面圧設計に関して2回のシリーズ講演をいただいている.
第72回委員会
令和3年2月26日に,転がり疲れに焦点をおいてた2題の講演と討議をオンラインにて実施した.
1)転がり疲れと面圧強さ設計シリーズ(第2回)
一般熱処理鋼の転がり疲れに及ぼす各種条件の影響
岡山大学 名誉教授 吉田彰氏
主に表面起点型のピッチング損傷を生じる一般熱処理(焼なまし,調質,ずぶ焼入れ/全体焼入れ など)鋼の寿命や面圧強さに及ぼす滑り・滑り率・回転速度,回転方向の反転と荷重重複,ローラ直径・接触幅・クラウニング半径,加工法・表面粗さ・加工目方向,硬さ・硬さ差,潤滑油 の影響および面圧強さ(ピッチング強さ)の推定について解説していただいた.また,ファインセラミックスの転がり疲れについても言及していただいた.
2)鉄道車輪鋼の内部欠陥を起点とした転動疲労き裂の進展特性
日本製鉄株式会社 技術開発本部 加藤孝憲氏
重荷重の貨車用車輪においては,内部の粗大な介在物やボイドを起点として転動疲労損傷が起こる場合がある.本研究では,車輪鋼の内部欠陥を起点とした転動疲労き裂の進展挙動を,人工欠陥材の転動疲労試験,弾塑性FEM解析により検討した結果が報告された.き裂は,欠陥サイズが大きいほど速く進展すること,接触荷重の入側に比べ出側でより進展することがわかった.FEM解析で得られたせん断型の等価応力拡大係数は,これら実験結果と良く対応し,比較的き裂長さが短い間においては,その進展挙動に欠陥である微小穴の変形が影響していると考察された.
両講演に関連して,実際に遭遇した不具合事象の解釈,き裂進展の研究と実設計との関連などに関する討論が行われた.
なお,初めてオンラインによる講演会を開催した.当初は討論が上手く実施できるか危惧もあったが,遠方からの参加が難しいメンバーや,疲労部門委員会,破壊力学部門委員会,高温強度部門委員会などからも多数の参加を頂けた.
今後も,学術研究と強度設計,安全性評価の実務とをリンクさせることを目的に,過去の破損事故事例の紹介に限らず,新しい視点からの強度設計や安全性評価に関わるアプローチ,規格基準などの紹介などを含め,連携・情報交換の場にしたいと考えている.
マルチスケール材料力学部門委員会 |
材料力学で扱う材料のスケールは従来のマクロスケールから,マイクロ・ナノスケールへと拡張している.また,マクロスケールの材料であっても,その強化・変形・破壊等の力学的な原理を知るためには,マイクロ・ナノスケールの実験・観察・解析に基づくモデル化とその検証が本質的に欠かせない.マルチスケール材料力学部門は,分子動力学部門(1994年設立)とマイクロマテリアル部門(1996年設立)が2017年に合併してできた部門であり,ナノ・マイクロ・マクロスケールにわたるマルチスケール材料力学の理論体系の構築,ならびにそれを応用へ導くための方法論の確立を目的とし,実験・観察・解析研究を密に連携させた部門を目指している.理論体系の構築のためには,想定されるあらゆるスケールの実験・観察・解析技術を連携させることが不可欠であることから,本部門では,これらの個々の技術の勉強会・情報提供を行うとともに,俯瞰的にこれらの技術を統合・横断させるための議論を行う.現在,注目されている実験・観察・解析の個別技術は以下のようなものである.
実験:半導体やMEMSの微細加工を応用した微小材料の機械的特性評価技術
観察:TEM,SEM,AFM,EBSDなどの微細観察を用いたナノ・マイクロスケールからの機械的特性の現象解明技術
解析:電子状態計算,分子動力学法,フェーズフィールド法,転位論・結晶塑性論などによる材料の機械的特性評価技術
定例の委員会は年間3〜5回の頻度で開催されている.委員に限らず参加可能な公開委員会の形式で,その時々で興味深いトピックに沿った講演を組み込んでいる.例として,令和2年〜3年度(第69期)におけるテーマおよび講演内容を以下に示す(講演者の敬称略.以下同).なお,新型コロナウィルス感染予防対策として全ての委員会はオンライン開催である.
第69期 第6回委員会 令和3年5月28日(金) (オンライン方式: Zoomミーティング)
※第6回マルチスケール材料力学シンポジウムに併設(予定)
また本委員会では,広範な研究者が集って深い議論および情報交換をする場として,「マルチスケール材料力学シンポジウム」を毎年開催してきている.この一連のシンポジウムにおいては,実験・観察・解析の技術に精通する大学・企業所属の一般研究者のみならず,大学院生など研究の緒についた若手の活躍も目覚ましい.毎年,シンポジウムでの優秀講演者には部門賞である優秀講演賞および優秀学生講演賞が各々授与され,意欲的な研究を奨励している.令和2年度には合計40件(招待講演 2件,口頭発表4件,ポスター発表36件)の発表が予定されていたが,新型コロナウィルス拡大感染予防のため中止となった.令和3年度は,5月21日(金)と5月28日(金)に学会総会併設行事として,第6回マルチスケール材料力学シンポジウム(招待講演 2件,口頭発表6件,ポスター発表43件)をオンラインにて開催される予定である.さらに,原子・分子レベルの解析技術(分子動力学法や第一原理計算)を企業の若手技術者や大学生などの初学者にも広く伝えるための講習会を毎年開催しており,こちらも盛況である.令和2年1月6〜7日にはオンラインにて「第17回ノートパソコンで出来る原子レベルのシミュレーション入門講習会〜分子動力学計算と電子状態計算」を開催し,解析技術の基礎理論とソフトウェアの利用方法に関する講義を提供した.詳しい講習内容は以下の通りである.
【1日目】
講義1(分子動力学の基礎・物性値算出)東京大学 泉 聡志/分子動力学ソフト“LAMMPS”演習 株式会社Preferred Networks 高本 聡,東京大学 榊間大輝/講義2(分子動力学ポテンシャルと分子動力学の実践的知識と応用)東京大学 泉 聡志/電子状態・分子道力学計算質問(個別相談可)
【2日目】
講義3(電子状態計算の基礎)大阪大学 尾方 成信/電子状態計算演習・電子状態計算ソフト(ABINIT等)の紹介 名古屋大学 君塚 肇/電子状態・分子動力学計算に関する質問(個別相談可)
以上のように,マルチスケール材料力学部門委員会は,様々なスケールの実験・観察・解析を連携させて,今後のマルチスケール材料力学の理論体系の構築に寄与すべく精力的に活動している.また,他の学術的グループと比較しても次世代を担う若手研究者の活躍が顕著である.既成枠に囚われないアイデアのもとでの活動をさらに推進していくために,老若男女問わず,本委員会に興味をもたれた様々な分野の研究者・技術者・学生の参加を待ち望んでいる.正会員・賛助会員ともに,参加ご希望の方は下記のメールアドレスまで連絡をお願いしたい.
e-mail: mmm@m3.jsms.jp
マイクロマテリアル部門委員会 |
マイクロマテリアルは近年のナノマテリアル研究以前の創世期に始まり基礎から産業にわたる多く分野を啓蒙してきたパイオニアとしての重要な役割を担ってきた経緯がある.その後半導体素子の微細加工技術と機械工学を結集したMEMS の振興に伴い,航空・宇宙から携帯電話や携帯ゲームなど広い分野の基盤技術となり,新しい産業分野として世界的に活発な研究・開発競争が行われ,それに伴ってナノマテリアルも含めた幅広い分野に不可欠なものとなった.ところがマイクロ・ナノマテリアルはあまりにも基盤的な材料であり本学会でもナノ材料部門委員会が創設されるなど部門としての境界が広くなり外部から特徴が見えにくくなってきた.
本部門委員会では他分野との差別化とともに材料を使う側のニーズ,言い換えれば材料研究の先が見えるマイクロ材料を用いる分野との連携の方策を模索してきた.その結果本部門委員会が扱う分野と連携は,次のように当面行うこととした.活動分野は以下の5 分野に重点を置いて展開していく.ここで言うマイクロマテリアル,マイクロエレメントとは,その最小寸法がマイクロメートルあるいはナノメートルオーダーのものを指し,寸法の微小化と薄膜製造方法に基づく未知の材料の問題点と機能を解明するとともに,その応用・展開の知識と可能性を研究することが目的である.
1 | 微小材料理論 微小材料の製造理論,物性・強度評価に対する従来の材料力学や破壊力学の適用範囲,分子動力学法等のシミュレーション理論の適用研究 |
2 | 微小材料加工法 スパッタリング,メッキ,マスキング,リソグラフィなどのプロセスと電子ビーム,集束イオンビーム(FIB) 等の加工法の研究 |
3 | 微小材料計測法 ナノインデンター,スキャニングプローブ顕微鏡,ラマン散乱,イオン顕微鏡,FESEM によるEBSD やEDX,微小材料試験機などの最新の試験・計測・分析手法および種々の試験環境境による影響,AFM ナノフラクトグラフィなどの研究 |
4 | 微小材料評価法 微小材料の計測法を用いた微小材料の機能・機械的特性や耐久性・剥離強度評価法,および材料特性のデータの集積,設計基準等に関する研究 |
5 | 微小材料,マイクロエレメント応用技術 微小材料の成型・集積・積層による機能と耐久性創製などによる実MEMS デバイスへの展開の分野 |
1 と2 はマイクロマテリアルの特徴でもあるがプロセスと加工がかなり重複しており区分けが難しいことに御留意いただきたい.
連携方策は
材料分野が重要であるが中心ではなく,多くの研究者が参加している学会や継続的なシンポジウム等で上記5 分野が積極的に連携・交流が可能な場所を検討した結果,本学会と本部門委員会が主催するマイクロマテリアルシンポジウムを,電気学会,日本機械学会,応用物理学会の3 学会が協力して同一会場で同時開催することにより参加者が相互に参加交流可能な電気学会主催のセンサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム,日本機械学会主催のマイクロ・ナノ工学シンポジウム,および応用物理学会主催の集積化MEMS シンポジウムと共同開催することにした.
平成24 年度は,平成24 年10 月22 〜 24 日に小倉の北九州国際会議場および西日本総合展示場で開催された電気学会主催の第29 回「センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム」と同時に同一の会場でマイクロマテリアルシンポジウム開催し,講演7 件を行った.参加者は,午前16 名,午後30 名の盛況で,活発な意見交換が行われた.講演演題と講演者は次のとおりである.講演1「微細針の接触による室温再結晶(電顕下観察とシミュレーション)」:藤田博之(東大),講演2「動的モンテカルロ法を用いた薄膜成長の原子シミュレーション」:松中大介(阪大),講演3「銅極細線の機械的特性に及ぼす疲労と経時変化の影響」:松村隆(電通大),講演4「超高周波超音波スペクトロスコピー法によるナノ材料の弾性定数の精密測定」:荻博次(阪大),中村暢伴,平尾雅彦,講演5「超臨界二酸化炭素を利用したマイクロマテリアルの精密成形」曽根正人(東工大),講演6「マイクロアクチュエータとしての形状記憶合金と新しい展望」:細田秀樹(東工大),講演7「金属ガラスを用いたMEMS とその特徴」:秦誠一(名大).
平成25 年度は,平成25 年11 月5 日(火)〜 7 日(木)に仙台で行われる電気学会の第30 回「センサ・マイクロマシンと応用システム」と同時に同一会場でマイクロマテリアルシンポジウムを開催致します.
また,平成25 年2 月27 日(水)に神戸大学で第47 回マイクロマテリアル部門委員会を開催し,前回議事録の承認,マイクロマテリアルシンポジウムの実施報告と来年度の計画に関する審議などを行った後,2 件の講演を行った.演題は,講演1「マグネシウム合金の生体デバイス応用」:向井敏司(神戸大),講演2「高分解能静電容量センサ搭載MEMS ナノ材料試験デバイスによる多層CNT の破壊挙動評価」:磯野吉正(神戸大)であった.
本部門委員会は,大学・研究機関のみならず企業サイドからもニーズやシーズを探る機会となるように進めてまいります
半導体エレクトロニクス部門委員会 |
本部門委員会の歴史は,1960年代前半に設立された「半導体物性等研究会」に遡る.この研究会は,当時に半導体の先駆け的な研究を開始された大阪大学の山口次郎教授が,この分野の飛躍的な研究の進展を期して,研究者の最新の研究成果の発表・討論と情報交換を目的に設立されたものである.1960年代という半導体の黎明期であり,その後30年以上にわたり,半導体技術の飛躍的な進展と時を合わせて,先進的な研究推進の原動力になり,またこの分野で活躍する多くの人材育成につながったことが推察される.
しかしながら,1997年1月に山口次郎教授(当時,大阪大学名誉教授,摂南大学名誉教授)がご逝去され,「半導体物性等研究会」は支えを失ってしまった.その後,この研究会が果たしてきた先駆的な活動を歴史に留め,またさらに一歩進んだ活動につながることを期して,山口次郎教授の直接的なご指導を受けた大阪大学の奥山雅則教授が中心となり,1998年(平成10年)10月に「半導体物性等研究会」の伝統を引き継ぐ形で本部門委員会が設立された.
爾来,本部門委員会は21年の歴史を有するに至った. 折しも半導体技術の急速な発展により,先端的研究成果の発表と討論の場として多くの学会・研究会が企画・運用されるようになった.その中で本委員会では,幅広い材料に対する総合的な観点から自由な雰囲気で話し合える機会を与えてきた.しかしながら,時代の流れがあわただしくなり,情報発信の源が各所にある現状から,委員会および研究会への参加者数が減少する傾向があったことも事実である.
そこで平成17年度より,今後の材料学会における本部門の特徴を際立たせ,活性化を図るための施策の一つとして,学部生や大学院生が参加しやすい形での研究会を企画し,学生に対して発表・参加を強く呼びかけることになった.学部生や大学院生は,実際上,大学の研究室における研究成果の中核を担っているが,自分たちの専門以外のことになると思いのほか知らない.また,学会に参加しても自分たちの専門分野のセッションにのみ出席し,専門外である材料についての発表には参加しない(というより,大きな学会では専門以外の分野に出席する時間的余裕がない).そこで,大学と専門の枠を越えて交流することで,人的かつ知的な融合を深めることができると考えたのである.また,一般の研究者,技術者にとっても,このクラスの学生の講演は学術的に最先端であるとともに,研究に深く従事していることからより内容に密接しており,詳細かつ技術的な知識を得ることができる.他方,学生にとっては,多くの研究者の意見を聞くことで自己の研究の意義を再認識し,論文の完成に向けての大きな指針を得ることができる.平成21年度には,さらに「学生優秀講演賞」と「講演奨励賞」を設けて若手研究者のモティベーションを高めることを目指した.このような新しい試みが徐々に委員会の発展につながっており,現在の研究会では,多数の参加を得て先端的な講演と活発な討論がなされている.優秀な講演が多く,学生優秀講演賞の選定は高いレベルで行われている.
2020年度は,総会(1回),研究会(3回)を開催した.コロナ禍により総会はメール審議,研究会はすべてオンライン開催とした.各研究会の前に毎回,委員会・幹事会を開催し,部門運営を議論する場とした.詳細は以下の通りである.
総 会
〈2020年4月180日,参加者18名〉
田中一郎委員長(和歌山大学)主催のメール審議により,平成31年度の活動について報告し,以下のように令和2年度の担当業務を決めた.
[委員長]吉本昌広委員(京都工芸繊維大学)
[幹 事]小池一歩委員(大阪工業大学),藤田静雄委員(京都大学),藤原康文委員(大阪大学),藤村紀文委員(大阪府立大学),喜多隆委員(神戸大学),市野邦男委員(鳥取大学),塩島謙次委員(福井大学),北田貴弘(徳島大学),荒木勉委員(立命館大学),田中一郎(和歌山大学)
[代議員]矢野満明委員
[編集委員会]正担当:藤村紀文委員,副担当:金子健太郎委員(京都大学)
[企画・広報委員会]正担当:西中浩之委員(京都工芸繊維大学),副担当:市川修平委員(大阪大学)
[ホームページ担当]宇野和行委員(和歌山大学)
[Facebook担当]藤村紀文委員
第1回研究会
〈2020年8月1日,担当:藤原康文委員,参加者40名〉
第2回研究会
〈2020年11月16日,担当:金子健太郎委員,参加者58名〉
なお,本研究会は,ナノ材料部門委員会との共催で実施した.
第3回研究会
〈2021年1月23日,担当:喜多隆委員,参加者 35名〉
委員会の活動の詳細や加入についてのお問い合わせは随時,委員長あるいはホームページ https://algainn.jsms.jp/ 記載の連絡先にご連絡いただきたい.
生産科学部門委員会 |
地球温暖化防止に向けた産業の取り組みが一層進む中,省エネ,省資源と持続可能な生産は,環境,情報,バイオ,ナノと共に現在の我が国の工業界におけるキーテクノロジーの一つである.本部門委員会は,生産を科学的に捉え,材料をキーワードに生産を取り巻く問題解決を研究目的として平成13年5月に設立された委員会である.
我が国の生産に関わる技術は,戦後の復興並びにその後の発展に大きく寄与したことは言及するまでもない.しかし,現在は,経済構造変革による「ものづくり」の形態変化,研究開発から製品への問題,後継者育成や技術継承などの問題,次世代への生産戦略の欠落や学生の理科離れなど多くの指摘があり,今後の我が国のものづくりが危ぶまれている.21世紀における「ものづくり」について,その創成コンセプトの創出を主眼に,地球環境などを視野に入れて,「生産」の科学技術を発展させることが,我が国の経済を支え,社会の安定的発展には不可欠である.このような趣旨に基づき,生産科学部門委員会では,定例委員会,研究討論会などの活動を行っている.
平成24年度の委員会活動として,以下に示す4回の研究討論会を行った.
平成24年度第1回生産科学部門研究討論会
(2012年5月24日)
* 大型工作機械と精度確保への取り組み
新日本工機 製造部 部長 島田 謙一 氏
* 日本の工作機械の発展要因の1 つとその呪縛−近未来NC のための加減速
新日本工機エンジニアリング 取締役 西橋 信孝 氏
* CAM-CNC 統合による工作機械の将来像
神戸大学 大学院工学研究科 教授 白瀬 敬一 氏
平成24年度第2回生産科学部門研究討論会
(2011年8月28日)
* 混合音を聞き分けるロボット聴覚センシング技術
京都大学 大学院情報学研究科 教授 奥乃 博 氏
* 自己言及性と双方向性から考える触覚技術
名古屋工業大学 大学院工学研究科 助教 田中 由浩 氏
* ロボットを使った生産システムへの視覚のセンサの利用
ロボットセルラボ シン 松岡 眞 氏
平成24年度第3回生産科学部門研究討論会
(2012年12月4日)
* マイクロエンドミルによる超精密加工の基礎と今後の展開
滋賀県立大学 教授 中川 平三郎 氏
* レーザー加工を利用した摩擦材の接着技術
潟Gクセディ 河端 紘 氏
* 人(女性)と地球に優しいものづくり
潟Gクセディ 多田 淳史 氏
平成24年度第4回生産科学部門研究討論会
(2013年1月13日)
3次元CAD教育を通して見えるもの
産業技術短期大学 二井見 博文 氏
最先端マルチフィジックス解析を活かしたものづくりへ向けて
計測エンジニアリングシステム梶@橋口 真宜 氏
PLMソリューションビジネスと現状
デジタルプロセス梶@八木 淳一 氏
これまで,10余年に渡って活動を続けてきた本部門委員会であるが,現在の日本を取り巻く社会情勢等も鑑み,平成24年度を以て,一旦,発展的解消する運びとなった.これまで本部門委員会の活動に御尽力いただいた部門委員の皆様方に,この場を借りて厚く御礼申し上げる次第である.
ナノ材料部門委員会 |
近年のナノテクノロジーの進展にともない,ナノスケール領域における材料の特性に関する情報の必要性とともに,ナノスケールレベルにおいて活用され得る新しい材料の開発に対する要求が急速に高まっている.これらのニーズに応えるべく,ナノスケール分析を核とし,有機・無機・高分子化学,機械工学,金属工学および物質情報工学を中心に,ナノをキーワードとする材料に関する総合的な研究を推進することを目標として,2003年(平成15年)2月に本部門委員会が設立された.本委員会は,本学会員に広く門戸を開放し,ナノ材料全般にわたる最新の情報収集・情報交換の場を提供しようとするもので,関心ある研究者・技術者の参加を期待している.
2020年度(令和2年度)の委員会活動は以下の通りである.
委員会
第1回委員会(通算第41回)(研究会)
(半導体エレクトロニクス部門委員会との合同研究会)
(2020年11月14日,京都大学・桂キャンパス)
[招待講演](1件)
「高温超伝導体固有ジョセフソン接合の物理と応用:単結晶がそのまま集積デバイスに」
(京都大学工学研究科)掛谷 一弘
[一般講演](9件)
@「EuZrO3系固溶体の結晶構造と磁気的性質」
○鬼頭 拓也, 村井 俊介, 藤田 晃司, 田中 勝久(京都大学)
A「界面顕微光応答法によるn-GaN上に印刷法で形成したNi,Agショットキー接触の 二次元評価」
○川角 優斗, 安井 悠人, 柏木 行康, 玉井 聡行, 塩島 謙次(福井大学, 大阪産業技術研究所)
B「二硫化モリブデン/グラフェンのガスセンシング特性」
○藤元 章, 前田 翔児, 井須 亮太, 小山 政俊, 小池 一歩, 矢野 満明(大阪工大ナノ材研)
C「低温成長GaAs1-xBixのBi組成の分子線エピタキシャル成長条件依存性」
○梅西 達哉, 高垣 佑斗, 富永 依里子, 行宗 詳規, 石川 史太郎(広島大学先進理工系科学研究科, 広島大学先端物質科学研究科, 愛媛大学理工学研究科)
D「Alイオン錯化時間とミストCVD法によるAlGaO混晶成長」
○太田 茉莉香, 宇野 和行, 田中 一郎(和歌山大学)
E「サファイア基板上α-Ga2O3 の成長メカニズムの解析」
○高根 倫史, 金子 健太郎, 藤田 静雄(京都大学工学研究科)
F「Eu添加GaNスラブに導入した2次元フォトニック結晶ナノ共振器の構造設計と 低温発光特性の評価」
○村上 雅人, 市川 修平, 岩谷 孟学, 佐々木 豊, 舘林 潤, 藤原 康文(大阪大学工学研究科)
G「高品質導電性DBRを用いたEu添加GaN縦型LEDの成長条件の検討と発光特性評価」
○小林 周平, 市川 修平, 塩見 圭史, 舘林 潤, 藤原 康文(大阪大学工学研究科, 大阪大学超高圧電子顕微鏡センター)
H「融点を超える高速熱処理によるAgプラズモニックナノ粒子アレイの光学特性の向上」
○東野 真, 村井 俊介, 田中 勝久(京都大学工学研究科)
日本材料学会第69期学術講演会オーガナイズドセッション
「ナノ/セラミック材料の現状と展望」(セラミック材料部門委員会との共催)
(2020年5月30日,電気通信大学)
@「Ga-Ge-Te 系ガラスにおける種々の元素の添加効果」
○白井 大地, 山本 茂, 岡田 有史, 若杉 隆, 角野 広平(京工繊大)
A「BaO-Na2O-Nb2O5-Al2O3-B2O3-SiO2 系結晶化ガラスの結晶化挙動と誘電率」
○辻井 那奈, 江口 魁星, 湯村 尚史, 角野 広平, 若杉 隆(京工繊大)
B「電気化学的酸化法によるオキシ窒化タンタル薄膜の室温創製」
○高橋 昌男, 横山 千香子(東京工科大)
C「金属有機構造体の分子認識能を利用したクロマトグラ フィー分離」
○久保 拓也, 松浦 綾一郎, 内藤 豊裕, 植村 卓史, 大塚 浩二(京大院工,東大院工)
D「ホウケイ酸ガラス/ジルコン質耐火物界面における気泡発生に及ぼす因子」
○赤羽 洋樹, 塩野 剛司(京工繊大)
E「アルミナ−マグネシア質不定形耐火物の機械的特性に及ぼすZnO添加効果」
○岩ア 健太, 塩野 剛司(京工繊大)
第6回材料WEEK 材料シンポジウム ワークショップ
「ナノ/セラミック材料の合成と評価」(セラミック材料部門委員会との共催)
(2020年10月14日,京都テルサ)
@「せん断法によるガラスー金属の接合強度の評価」
○下尾勇貴 (京工繊大),岡田有史,角野広平,湯村尚史,若杉 隆
A「ホウケイ酸ガラス-ジルコン質耐火物界面における気泡発生に及ぼす因子(第2報)」
○赤羽 洋樹, 塩野 剛司(京工繊大)
B「K2Oおよび使用後珪石れんが添加時のトリジマイト相の生成挙動」
○辻井 佑夏, 木谷 友子, 塩野 剛司(京工繊大)
C「アルミナ−マグネシア質不定形耐火物の機械的特性に及ぼすTiO2 添加の影響」
○新家 広規, 塩野 剛司(京工繊大)
D「新規プロセスによる Linde F型ゼオライト硬化体の合成と物性評価」
○桝田 未来, 塩野 剛司(京工繊大)
E「様々な骨格構造を持つAg 添加ゼオライト蛍光体の合成」
○南 雄也, 村田 秀信, 徳留 靖明, 吉田 要, 中平 敦(阪府大, JFCC)
F「結晶性水酸化物ナノビルディングブロックから成る構造均一性の高いエアロゲル体の合成」
○野口 大輔, 竹本 晶紀, 徳留 靖明, 金森 主祥, 上岡 良太, 岡田 健司, 高橋 雅英, 村田 秀信, 中平 敦(阪府大, 京大)
G「MOF 充填カラムの高分子分離への応用」
○久保 拓也, 松浦 綾一郎, 細野 暢彦, 植村 卓史, 大塚 浩二(京大院工, 東大院工)
H「ハイドロキシアパタイト表面における Mg2+の状態分析」
○中村 天斗, 村田 秀信, 徳留 靖明, 中平 敦(阪府大)
I「酸浴処理を用いた高機能 TiO2 光触媒の作製と解析」
○奥山 慶大, 吉田 浩之, 魯 云(千葉大, 千葉県産技研)
J「Ni-Ti-Al系ホイスラー合金の熱電特性解析と高性能化 への検討」
○李 正旭, 黄 嘉一, 上間 啓祐, 千島 大周, 吉田 浩之, 魯 云(千葉大, 千葉県産技研)
K「有限要素法を用いたTiO2-x-Ni複合熱電材料の特性解析」
○上間 啓佑, 李 正旭, 千島 大周, 吉田 浩之, 魯 云(千葉大, 千葉県産技研)
L「板状 Co3O4を用いたCa3Co4O9板の作製と解析」
○ZHAN NI, 吉田 浩之, 魯 云(千葉大, 千葉県産技研)
生体・医療材料部門委員会 |
近年,医学・医療分野と材料科学・機械工学分野を結合した学際領域の研究が大きく前進し,生体機能に関する基礎的研究から患者の治療を中心にした臨床的な応用研究まで,多くの異なる専門領域にまたがる共同研究や研究交流が積極的に展開されている.整形外科,外科,歯科など医学分野では人工の置換材が用いられることが多くなってきた.また,X 線透視,CT,MRIなどを用いた低侵襲治療の普及・開発に伴うX線透過性や非磁性などを有する医療器具,車椅子などの補助・福祉機材,義手・義足などの義肢装具等,生体・医療分野においてそれぞれの要求に合った材料開発や利用技術の確立の必要性が叫ばれている.これらの生体材料・医療材料については,比強度・比剛性に優れた材料,耐環境性に優れた材料,生体適合性に優れた材料,成形性に優れた材料など,多種多様な機能や特性が要求されるので,材料科学・医学・生物学・化学・機械工学などさまざまな分野の研究者,技術者を融合した研究開発システムの構築が不可欠となっている.また,このような分野の材料は直接人間の生命に直結するので,十分な機能と高い安全性・信頼性を保証する必要があり,そのための技術の確立,ならびにその標準化に対する要求が一段と強くなっている.この部門委員会は,2004年4月に発足した比較的新しい委員会であり,このように「材料学」を共通の土俵にして,種々の分野の研究者・技術者が分野横断的に参集し,活発な学会活動を展開している点が本学会の一つの特徴である.現在の登録委員数は31名であり,若手の研究者を中心として活動を活発化している.
2020年度の活動は以下のとおりである.
第69期学術講演会オーガナイズドセッション
「生体・医療・福祉材料」
(2020年5月30日,電気通信大学)
本セッションでは14 件の発表申込があった.新型コロナウィルス流行のため対面での学術講演会自体は実施できなかったが,講演論文集は発刊され既発表扱いとなった.
生体・医療材料部門委員会例会および第1回生体・医療材料部門委員会学生研究交流会
(日本材料学会関東支部との共催)
(2020年9月1日,オンライン)
日本材料学会 生体・医療材料部門委員会では,学生会員・若手会員の相互交流・情報発信や生体・医療材料に関する興味を持って頂く機会を増やすため,関東支部との共催により学生研究交流会を企画した.特に,修士課程に進学予定の学部生・高専専攻科生などに発表してもらい,彼らを生体・医療材料関連の研究に誘うことを目指したものである.本来,2020年3月中旬につくば研修支援センターにて開催する予定であったが,新型コロナウィルス流行のために延期されていたものである.1件の基調講演と10件の学生の講演があり,活発な意見交換がおこなわれた.
生体・医療材料部門委員会例会
(日本複合材料学会・東海北信越支部および日本材料科学会・北陸信越支部との共催)
(2020年12月9日,金沢工業大学八束穂キャンパスとオンラインのハイブリッド開催)
九州大学 東藤貢氏
「循環器系組織工学のための生体吸収性足場材料の開発と評価」
近畿大学 山本衛氏
「生体組織の損傷およびその修復」
金沢工業大学 西田裕文氏
「エポキシ樹脂の架橋ゼロ重合と架橋フル重合」
生体・医療材料部門委員会例会および第2回生体・医療材料部門委員会学生研究交流会
(日本材料学会関東支部との共催)
(2020年3月15日,オンライン)
2020年9月に開催した第1回に続いて,第2回生体・医療材料部門委員会学生研究交流会を,関東支部との共催により企画した.本稿締切時において発表申込受付中であり,この会から次世代の人材育成に繋がることが期待される.
2021年度の活動として,第70期学術講演会でのオーガナイズドセッション「生体・医療・福祉材料」と4回の部門委員会例会を予定している.そのうち,1回目の部門委員会例会においては,複合材料部門委員会との合同で第70期学術講演会の併設行事として実施する.また,4回目の部門委員会例会との併催として,第3回生体・医療材料部門委員会学生研究交流会の実施を予定している.加えて,医療材料や細胞・生体組織に関する話題をテーマとして,他部門・支部・生体医療材料系の他学会・協会と共催での講演会の開催も検討中である.なお,本部門委員会では,独創的な研究の奨励と若手研究者の育成を目的として,「日本材料学会 生体医療材料部門研究奨励賞」を設け,毎年度の優秀な若手研究者を顕彰している.生体・医療材料に関わる基礎あるいは応用研究の業績を幅広く対象とし,応募者がその研究の構想や遂行に重要な役割を果たしたものであることを応募の条件としている.応募資格は,日本材料学会正会員(授賞時点)であり,2022年4月1日時点で満40歳未満の方を対象としている.詳細は,本部門の幹事委員まで問い合わされたい.
金属ガラス部門委員会 |
我が国では,これまで鉄鋼材料を中心とした社会基盤材料が多種多様な産業界の発展に多大な貢献を果たしてきた.今後さらなる産業界の持続的発展を維持するためには,超高強度材料,超長寿命材料や超軽量材料などの革新的先進材料の普及が必須である.現在,注目されている革新的先進材料として,我が国が最も世界的にリードし,かつ社会基盤構材料として将来性の高い「金属ガラス」および「ハイエントロピー合金」がある.金属ガラスはその誕生から二十数年を迎えようとしているが, 21世紀に最も期待される構造材料および機能材料の一つとして,全世界で基礎的および応用の両面から研究が行われている.また,ハイエントロピー合金は2004年に発見され,現在注目を集める新材料である.本部門委員会では,「金属ガラス」および「ハイエントロピー合金」を実用化するために必要な材料的信頼性確保のため,基礎的物性の理解や,材料科学の分野で精力的に研究されている構造と安定性に関する知見との融合を計り,金属ガラスおよびハイエントロピー合金の材料の体系化をはかることを目的としている.今後,本部門委員会が取り組む重点的研究課題として,以下の2つを掲げる.
これらの研究課題の進展を目標に,本部門委員会では以下の4つの事業を展開する.
本部門委員会は,2007年1月19日に第1回委員会を開催し,本部門委員会の方針について討議し,活動を開始した. 2020年度(令和2年度)はコロナウイルスの影響によりいくつかの活動が中止となったがオンライン形式で下記の活動を行った.
合同講演会:令和3年3月12日,粉体粉末冶金協会金属ガラス・ナノ金属結晶委員会との合同講演会(オンライン形式)を行った.下記の2件の講師による特別講演と3件の若手発表があった.
「Heterostructured High Entropy Alloys」H.S. Kim(韓国浦項工科大学)
「ハイエントロピー合金・金属ガラスとエントロピー」 永瀬丈嗣 (大阪大学)
第53回金属ガラス部門委員会:令和3年3月12日,部門委員会および部門賞表彰式(オンライン形式)を行った.
優秀発表賞 (第6回材料WEEKワークショップ発表分)
「光相変化材料の超高速アモルファス化過程の理解へ向けた共鳴結合結晶PbTeの光励起応答解析」谷村 洋(東北大)
「Meta-stabilization of high entropy alloys for simultaneously enhancing strength and ductility」Wei Daixiu(東北大学)
本部門委員会では幅広い分野の技術者,研究者の参加を促すために研究会の門戸を開いている.本部門委員会の会員でなくても学生は無料,一般には有料で研究会の聴講が可能である. また,材料学会部門委員会間の共同委員会開催,他学協会との協賛・共催研究会も積極的に開催している.このような活動を通して金属ガラス・ハイエントロピー合金のメタラジーに関する議論の場を提供し,できるだけ多くの人にその問題点を明らかにして解決に向けた取り組みを促進させたいと考えている.金属ガラス・ハイエントロピー合金の構造・機能材料としての信頼性確保や実用化に興味がある方々の積極的な参加を期待している.本委員会への問い合わせは,事務局まで申し出ていただきたい.
金属ガラス部門委員会ホームページ: https://bmg.jsms.jp/