公開部門委員会
積層造形技術と疲労特性
企画
疲労部門委員会
形式
現地対面+オンライン
会場
大阪科学技術センター 404号室(4F)
オンラインツール
zoom
日時
2022年5月29日(日)13:00〜17:00
趣旨
各種積層造形技術を基本原理とする三次元プリンタを用いれば,従来の加工法では実現困難であった微細セル構造等の複雑形状や精緻な冷却水路等の内部構造を有する高機能少量製品を,難加工材から電子データに基づいて直接,作製可能となります.そのため,近年にはこの革新的技術に関し,種々の応用へ向けた研究が推進されています.その一方で,積層造形技術を用いて作製した金属製品には,疲労強度が顕著に低いなどの解決するべき課題があり,これが同技術の広範に渡る実製品への応用の妨げとなっています.以上を背景として,本部門委員会では積層造形技術やこれにより作製した金属材料の疲労強度に関する研究討論会「積層造形技術と疲労特性」を企画しました.委員の皆様のみならず,関連分野の研究者及び技術者の皆様の参加をお待ちしております.
プログラム
1. 13:00〜13:30 ビジネスミーティング
2. 13:30〜13:45 R3年度疲労部門委員会部門賞贈呈式
3. 14:00〜17:00 研究討論会
「積層造形技術と疲労特性」
(1) 14:00〜14:45
人工欠陥溶性材を利用した積層造形Ti-6Al-4Vの疲労限度予測手法の提案
岐阜大学 植松美彦 氏
積層造形金属の疲労破壊は,材料中に含まれる欠陥支配型となることが多い.本研究では,積層造形Ti-6Al-4Vの欠陥を模擬し,Ti-6Al-4Vの溶製材にドリルによる人口欠陥を導入した.同試験片を用いて,回転曲げにより108回までの超高サイクル疲労試験を実施した.人工欠陥の寸法を変えて試験を行うとともに,欠陥からのき裂発生の有無を判定することで,北川−高橋線図を描き,さらに村上の式も利用して積層造形Ti-6Al-4Vの107回と108回の疲労強度を予測することを試みた.
(2) 14:45〜15:30
積層造形体In718合金の機械的特性に及ぼす熱処理の影響
株式会社NTTデータザムテクノロジーズ
蘇亜拉図(ソヤラト) 氏
レーザー積層造形法は複雑形状を用いる部品で適応が可能であり,航空宇宙分野でも応用が期待されている.耐熱合金であるIN718合金,IN625合金とHX合金は既にレーザー積層造形が可能である.しかし,積層造形Ni基合金では柱状晶の組織が形成され,機械的特性の異方性を有することが報告されている.本報告では,積層造形体IN718合金の応用例および機械的特性を改善のための取り組みとして熱処理方法を紹介し,特に高温クリープと高温引張に及ぼす熱処理の影響を報告する.熱処理による組織変化と機械的特性の相関を明らかにし,機械的特性改善メカニズムを考察する.
(3) 15:45〜16:30
Ti-6Al-4V合金SLM材の極短時間処理による性能改善
京都工芸繊維大学 森田辰郎 氏
チタン合金では疲労き裂が発生すると停留することなく破断に至ることから,その疲労強度は応力集中によるき裂の発生に敏感である.そのため,パウダーベッド方式に分類されるSLM法を用いて造形したチタン合金(SLM材)の場合,造形表面の凹凸や内部欠陥による応力集中により,疲労強度は大幅に低い値となる.これに加え,SLM材は通常のチタン合金と同様に耐摩耗性に劣る問題がある.本講演では,機械的性質の劣化なしに疲労強度と耐摩耗性を極短時間(60秒程度)に改善可能な独自開発の処理法について紹介する.