公開部門委員会
積層造形材の最新研究
企画
疲労部門委員会
形式
現地対面
会場
日本大学工学部 1号館131号室
日時
2025年5月30日(金)13:00〜16:45
趣旨
積層造形や3Dプリンティングと呼ばれるAdditive Manufacturing: AMは,金属や樹脂などの素材を溶かして一層毎に積み上げて三次元造形体を作る加工技術であり,切削など従来の加工法では難しい複雑な形状の部品を製作でき,製作期間の短縮やコスト節約,少量生産も可能であることから,航空宇宙や自動車,医療など様々な産業分野において重要性が高まってきている.一方,AM材では,造形過程の溶融不良や気孔,マイクロクラックなど欠陥の形成や,造形後の表面粗さが部材の疲労特性に影響を及ぼすと考えられ,これを検討することはAM材の強度・安全確保のために重要である.しかし,日本国内におけるAM材の疲労研究は,海外に比べてまだ多くない.そこで,積層造形技術を利用した部材の創成やその強度などに関する最近の研究テーマを紹介する.
プログラム
1. 13:00〜13:30 ビジネスミーティング
2. 13:30〜13:50 R6年度疲労部門委員会部門賞・第36回疲労シンポジウム優秀研究発表賞贈呈式
3. 14:00〜17:00 研究討論会「積層造形材の最新研究」
(1)14:00〜14:45
金属積層造形における欠陥抑制と高機能材料の創製
東北大学 金属材料研究所
准教授 山中 謙太 氏
Powder Bed Fusionをはじめとする金属積層造形技術を用いた金属材料の特性向上には,金属粉末の溶融凝固挙動に基づく組織制御と,造形時に発生する様々な欠陥の抑制を両立することが不可欠である.本講演では,造形欠陥の形成メカニズムについて述べるとともに,造形プロセスの最適化,原料粉末の高機能化,さらには合金設計の観点から,疲労特性をはじめとする機械的特性に優れた構造用金属材料・構造部材創製について最新の研究成果を紹介する.
(2)14:45〜15:30
溶製金属と3D積層造形金属のハイブリッド構造作製とその疲労挙動
岐阜大学 工学部
教授 植松 美彦 氏
L-PBFやDEDと言った3D積層造形手法により,Ti合金や鉄鋼の溶製金属上に,同種金属,あるいは異種金属粉末を積層造形してハイブリッド構造を作製した.また,一部のハイブリッド構造では残留応力の測定も行った.ハイブリッド構造体から疲労試験片を採取し,引張り圧縮や平面曲げの疲労試験を実施してハイブリッド構造における疲労破壊形態を検討した.
(休憩 15:30〜15:45)
(3)15:45〜16:30
医療用金属積層造形材の疲労強度向上に資する表面改質の効果と有用性
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点
上智大学 理工学部
教授 久森 紀之 氏
現状の人工関節デバイスの選択は,骨形態や骨質を必ずしも考慮したデバイスではないため,インプラント使用時に不具合が生じる.これを解決する手法として,金属積層造形を用いたカスタムメイドインプラントが提案されている.金属積層造形されたデバイスは,従来の鋳造や鍛造とは作製方法が異なるため,力学特性や組織構造などを把握する必要がある.また,造形で生じる欠陥が疲労特性の低下に繋がる課題から,疲労特性向上に資する技術が必要であり,本講演では表面改質技術を用いた効果と有用性について紹介する.